【CD】愛する歌/野々下由香里&小倉貴久子

 明治時代に西洋音楽を取り込んで花開いた“日本歌曲”黎明期の名作と、その誇らしい子孫ともいえる現代の木下牧子の作品をカップリングした魅惑の一枚。瀧廉太郎、山田耕筰から20世紀の平井康三郎、髙田三郎まで、誰もが知る愛唱歌が勢揃いする前半(野平多美による解説文も必見!)は、橋本國彦が共に与謝野晶子門下の深尾須磨子(詩人)と荻野綾子(大正〜昭和を生きた伝説の歌姫)のために書いたアヴァンギャルドな〈舞〉(初稿譜に基づく)が圧巻。そして今日の声楽家に愛される木下作品が、やなせたかしの世界を見事なまでに歌に昇華しているとわかる。
文:東端哲也
(ぶらあぼ2022年7月号より)

【information】
CD『愛する歌/野々下由香里&小倉貴久子』

平井康三郎:ゆりかご、びいでびいで/山田耕筰編:中国地方の子守歌/大中寅二:椰子の実/山田耕筰:かやの木山の、曼珠沙華/杉山長谷夫:出船/中田章:早春賦/弘田龍太郎:浜千鳥、叱られて/近衛秀麿:ちんちん千鳥/瀧廉太郎:荒城の月/橋本國彦:舞(初稿譜に基づく)/髙田三郎:くちなし/木下牧子:愛する歌

野々下由香里(ソプラノ)
小倉貴久子(ピアノ)

コジマ録音
ALCD-7280 ¥3080(税込)