第22回別府アルゲリッチ音楽祭 記者発表
マルタ・アルゲリッチ メッセージ全文

 世界的ピアニストであるマルタ・アルゲリッチが総監督を務める「別府アルゲリッチ音楽祭」の記者発表が、2月7日に別府市のしいきアルゲリッチハウスにて行われ、ピアニストで同音楽祭総合プロデューサーの伊藤京子らが出席した。1998年にスタートし、大分県別府市を中心に開催されてきた同音楽祭。昨年には、大分県が、アルゲリッチの誕生日である6月5日を「マルタ・アルゲリッチの日」に制定し、長年にわたる功績をたたえた。2020年、21年とコロナ禍の影響で公演中止を余儀なくされてきたが、2022年は5月7日〜7月17日の期間に、別府市、大分市、そして東京などを舞台に開催されることが発表された。

マルタ・アルゲリッチ (c)Rikimaru Hotta

 今年の音楽祭のテーマは「音楽とSDGs〜新しい道」。SDGs(エスディージーズ)とは、2015年に国連サミットで採択された、持続可能な世界を実現するための17の国際目標のこと。音楽祭では、「3:すべての人に健康と福祉を」「4:質の高い教育をみんなに」などの実践を目指している。
 アルゲリッチは、「昨年大分県が『アルゲリッチの日』を制定され、これまで私の音楽祭を通して、一貫して求めてきた『社会の中での芸術の役割』に込められた思いを皆さまと分かち合えたように感じています。それは今最も求められる『寛容と共生』です」とメッセージを寄せた。プロデューサーの伊藤も、「音楽祭は“出会いの場”。単なる娯楽で終わらず、社会との関わりを深めながら、音楽ができることを長年にわたって探してきた」と述べ、シューマンの評論「新しい道」を連想させるテーマの通り、コロナ禍を乗り越えて開催実現を目指す前向きなメッセージを発信したい、と音楽祭開催の意義を語った。

左より:大分県企画振興部 部長 大塚 浩、アルゲリッチ芸術振興財団 理事長 尾野賢治、別府アルゲリッチ音楽祭総合プロデューサー 伊藤京子
写真提供:アルゲリッチ芸術振興財団

 今年のプログラムには、「世界へ羽ばたく音楽家たち」シリーズに、亀井聖矢(5/7)、山縣美季&谷昂登(6/5)、三浦謙司(7/17)ら、国内外のコンクールで受賞経験を持つ若手ピアニストが登場。東京オペラシティ コンサートホールで開催される「ピノキオ支援コンサート」(5/16)では、アルゲリッチの他、チョン・ミン(指揮)、ウィリアム・チキート(ヴァイオリン)ら海外アーティストが来日し、東京音楽大学付属オーケストラ・アカデミーとの共演でシューマンのピアノ協奏曲などを演奏する。同公演では、チェロのミッシャ・マイスキーも登場し、アルゲリッチとのデュオも披露する予定。

上段左より:伊藤京子 (c)Rikimaru Hotta、ミッシャ・マイスキー (c)Hideki Shiozawa、チョン・ミン (c)Silvia Lelli、ウィリアム・チキート (c)Alberto PATCH
下段左より:亀井聖矢、山縣美季 (c)井村重人、谷 昂登 (c)井村重人、三浦謙司 (c)Jeremy Knowles

 そして今年は、水戸芸術館、高崎芸術劇場、アルカスSASEBO、MOA美術館 能楽堂(静岡県熱海市)にて、関連コンサートも開催される。MOA美術館 能楽堂では、映像作家/プロデューサー/写真家であるアルゲリッチの三女ステファニーがオフィシャル・フィルム・メーカーとしてドキュメンタリーを制作。アルゲリッチ独奏と能舞のコラボレーションなどのプログラムを収録し、世界に発信される予定。

 その他、恒例の「大分県出身若手演奏家コンサート」や「ヴァイオリン・マスタークラス(後日配信予定)」も行われる。また、2022年は、日中韓の各都市で様々な文化芸術イベント等を実施する「東アジア文化都市」に大分県が選ばれたことから、5月22日の開幕式典ではアルゲリッチらの出演するコンサートが開催されるなど、「育む」「アジア」「創造と発信」という音楽祭の理念を体現するような様々なイベントが予定されている。

 以下、記者会見に寄せられたマルタ・アルゲリッチのメッセージ全文。

マルタ・アルゲリッチ メッセージ

三度目の正直、という言葉は今の私たちのためにあって欲しい、と心から音楽祭の開催を願っています。
世界中の全ての人々が経験しているコロナ禍にあって、当たり前にあった私たちの自由が奪われた、と言っても過言ではないでしょう。
そのなかで私は演奏の中断を余儀なくされたものもありますが、幸運なことに変わりなく演奏を続けることができているように思います。
無観客であったりもしましたが、演奏できることは私にとっては大きな喜びでした。
これからもさまざまな工夫のなかで、皆さまと音楽を通して繋がっていきたいと思います。
昨年大分県が「アルゲリッチの日」を制定され、これまで私の音楽祭を通して、一貫して求めてきた「社会の中での芸術の役割」に込められた思いを皆さまと分かち合えたように感じています。
それは今最も求められる「寛容と共生」です。
その思いを、⻑年にわたって毎年音楽祭のテーマに込めてきました。またピノキオコンサートを通して、多くの方々の共感もいただいています。
特にコロナ禍を経験してきた今こそ、この私たちの思いを深くご理解いただけるように思います。
今年こそは危機に対しての万全の対策をお願いして実現を、と心から願っています。
今年もメッセージに込めた思いと共に、演奏を存分に楽しんでいただけると嬉しいです。

テーマは
音楽とSDGs〜新しい道
です。

令和4年2月7日
公益財団法人アルゲリッチ芸術振興財団 総裁
別府アルゲリッチ音楽祭 総監督
マルタ・アルゲリッチ

【Information】
第22回 別府アルゲリッチ音楽祭
2022.5/7(土)〜7/17(日)

[別府]しいきアルゲリッチハウス、ビーコンプラザ
[大分]iichiko総合文化センター、平和市民公園能楽堂
[東京]東京オペラシティ コンサートホール 他
3/12(土)発売
問:アルゲリッチ芸術振興財団0977-27-2299
https://www.argerich-mf.jp
※音楽祭の詳細は、上記ウェブサイトでご確認ください