【CD】J.S.バッハ:フーガの技法/渡邊順生&崎川晶子

 鍵盤楽器奏者、指揮者として活躍し、日本の古楽界を牽引する渡邊順生の最新盤は、バッハの最晩年の作品「フーガの技法」。様々な技法が凝らされたフーガやカノンが収められ、多くの“謎”がいまだに議論の的となっているこの曲は、鍵盤楽器奏者たちが自らの音楽性を最大限に発揮して臨むことを求められる難曲である。本盤では、渡邊の精緻な演奏によって絡み合う音型の中から旋律線が鮮やかに示され、常にこの作品に付きまとう“難解さ”が解きほぐされていく。これは優れた演奏はもちろんだが、慣例とされている“楽曲の配列”に疑問を投げかけ、確固とした意志を持って臨んでいるからこそもたらされるものである。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2022年2月号より)

【information】
CD『J.S.バッハ:フーガの技法/渡邊順生&崎川晶子』

J.S.バッハ:フーガの技法 BWV1080(自筆稿フーガ第1番、自筆稿カノン第1番、3つの主題によるフーガ(未完) 他を含む)

渡邊順生 崎川晶子(以上チェンバロ)

コジマ録音
ALCD-1209,1210(2枚組) ¥3740(税込)