トッパンホール ニューイヤーコンサート 2022

世界が注目するチェリストと日本の名手たちで聴かせる粋な演目

 トッパンホールの公演ラインナップからは、独自の企画力を持ったプロデューサーの「こうしたら絶対面白いはず」という思いが伝わってくる。2022年も、トッパンでしか聴けない一風変わったニューイヤーコンサートで同ホールの幕は開ける。

 前半は若きチェリスト、ズラトミール・ファンの無伴奏。世界の名だたるコンクールを総なめにし、19年には史上最年少でチャイコフスキー国際コンクールを制覇した大型新人だ。豊かで奥深い音色、鮮やかなテクニック、作品に対する確かな洞察…どれもが高い水準に達しており、いよいよ世界の檜舞台での活躍が始まるというタイミング。これからが旬の時期の初物を届けたいというホールの意気が感じられる。

 曲目は、デンマークのハンス・アブラハムセン、フィンランドのエサ=ペッカ・サロネンと北欧の現代作曲家の2曲の間にバッハの無伴奏チェロ組曲第2番を入れ、文楽にインスピレーションを受けた黛敏郎作品で閉じる。構成も粋だ。

 後半、シューベルトの弦楽五重奏曲も絶妙な選曲だ。チェロが2本入って低音域を増強した大作だが、ファンとともにチェロを弾くのは笹沼樹。カルテット・アマービレをはじめ、アンサンブルやソロに引っ張りだこの若手で、こちらもこれからが旬。

 ヴァイオリンの日下紗矢子はベルリン・コンツェルトハウス管と読響、日独2つのオケのコンサートマスターを務める。笹沼と同じくカルテット・アマービレの北田千尋は、この曲もセカンドで日下を支える。読響首席ヴィオラの柳瀬省太も当代きっての名手。トッパンホールゆかりの実力者たちだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2022年1月号より)

*出演を予定していたズラトミール・ファン(チェロ)、日下紗矢子(ヴァイオリン)は、予定の日程での入国/帰国が困難となりましたため、出演を断念することとなりました。
本公演は周防亮介(ヴァイオリン)、川口成彦(フォルテピアノ、ピアノ)、伊東裕氏(チェロ)を新たに迎え、プログラム前半を変更して開催されます。(1/6主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。


トッパンホール ニューイヤーコンサート 2022
神と悪魔に魅入られた男—フランツ・シューベルト

〈出演〉
周防亮介、北田千尋(ヴァイオリン)/柳瀬省太(ヴィオラ)
笹沼樹、伊東裕(チェロ)/川口成彦(フォルテピアノ、ピアノ)
〈プログラム〉
シューベルト:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第1番 ニ長調 D384[北田、川口]
シューベルト:4つの即興曲集 D899[川口]
エルンスト:シューベルトの《魔王》の主題による大奇想曲 Op.26[周防]
シューベルト:弦楽五重奏曲 ハ長調 D956[周防、北田、柳瀬、伊東、笹沼]

2022.1/25(火)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
https://www.toppanhall.com