演奏者にマッチした絶妙なプログラミング
毎回バラエティ豊かな出演者とプログラミングで人気の神奈川フィル。5〜6月の定期も実に意欲的で覇気が漲っている。
名誉指揮者の現田茂夫が指揮する第299回定期。最大の聴きどころは、今シーズンから第1コンサートマスターに就任する崎谷直人がソロを弾くモーツァルトの協奏曲第4番だ。当時ザルツブルクの宮廷に仕えていた若き日の作曲者が残した一連のヴァイオリン協奏曲の中で、とりわけ気品に溢れた秀作と言えるだろう。谷は、ウェールズ弦楽四重奏団の一員として欧州で長年学んだ最先端の音楽を、隅々まで洗練された妙技で聴かせてくれそうだ。また、当公演では、團伊玖磨の交響組曲「アラビア紀行」も要注目。命日が近い同フィル桂冠芸術顧問の作曲者を偲んで選ばれたというから、特に熱のこもった演奏となりそうだ。
記念すべき第300回定期には、4月に常任指揮者披露公演を行ったばかりの川瀬賢太郎が登場。今や同フィルの代名詞ともいえるマーラーの大作、交響曲第2番「復活」に挑む。自分より遥かに巨大なものに押しつぶされそうな不安と恐怖。それに打ち克とうとする青年らしい意気込みに溢れたこの交響曲は、今の川瀬に最もふさわしい作品のひとつと言えるだろう。才気煥発な彼が、“自分のオーケストラ”と丹念に創り上げる「復活」に注目だ。
それにしても、どちらの公演も本当に魅力的な内容。これほど出演者にぴったりなプログラムはそうそうお目にかかれない!
文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ2014年5月号から)
第299回定期演奏会★5月16日(金) Lコード:39946
第300回定期演奏会★6月27日(金) Lコード:39947
会場:横浜みなとみらいホール
問:神奈川フィル・チケットサービス045-226-5107
http://www.kanaphil.or.jp