2021年11月の海外公演情報

Wiener Staatsoper

『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。海外にはなかなか出かけられない日々が続きますが、“妄想トラベル”を楽しみましょう!
[以下、ぶらあぼ8月号海外公演情報ページ掲載の情報です]

曽雌裕一 編

【ご注意】
 新型コロナウイルス感染の影響により、本欄に掲載した音楽祭や劇場等の公演予定について、今後、重大な変更や中止・延期等の措置が施されて実際の公演内容と異なってしまう可能性も十分あり得ます。その点をご留意いただき、最新情報は必ず各音楽祭・劇場等のウェブサイトでご確認いただきますようお願いいたします。

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 やっと2021/22シーズンの予定が発表されてきたため、前号までに紹介できなかった9月・10月の公演内容を11月と一緒に記述したケースが今月号では結構ある。そのため、紙幅の関係で掲載を省略した劇場・オケがいくつか発生してしまったことをご容赦いただきたい。

 さて11月の公演。ここ数年、ベルリン州立歌劇場では、11月を「バロックターゲ」と称する古楽月間と位置付けており、今年も、アイム指揮ル・コンセール・ダストレによるカンプラの「イドメネー」、ルセ指揮ベルリン古楽アカデミーによるグルックの「オルフェオとエウリディーチェ」、さらにはラトル指揮フライブルク・バロック管によるラモーの「イポリートとアリシー」など強力なプログラムを並べている。また、ピエール・ブーレーズ・ザールでは、サヴァールやダントーネ、パストゥシュカといった古楽系の名匠達が名を連ねる注目コンサートも並行して開催される。古楽と言えば、アン・デア・ウィーン劇場のラインナップがまた凄い。今月号では新シーズン初めの9月からの演目を列記したが、9月のカヴァリエリ「魂と肉体の劇」、カルダーラ「惑星の調和」、10月のアルビノーニ「パルミラの女王ゼノビア」、11月のポルポラ「ディアネイラ、イオーレとエルコーレ」、ヘンデル「テオドーラ」など珍しい曲が多く、古楽ファンにはまさしく垂涎の演目。その合間に、ブリテンの「ピーター・グライムズ」やカタラーニの「ラ・ワリー」といった、演奏頻度のあまり高くない逸品オペラを挟み込むセンスもまた憎い。

 ところで、サイモン・ラトルは、11月には、前記のベルリン州立歌劇場でのラモーの他、バイエルン放送響(2023/24シーズンから首席指揮者となる予定)に客演して、バッハの「マタイ受難曲」とマーラーの交響曲第9番という重厚な演目を採り上げる(新ホールの「イザールフィルハーモニー」で開催)。しかも、これに先立つ9月・10月のロンドン響は、ツアーを含む主要公演をほとんどラトル1人で指揮するという獅子奮迅の仕事振りだ。ちなみに、ロンドン響は10月はハーディング、11月はロト、と売れっ子指揮者を揃えて公演を行うが、そのロトはバイエルン放送響で「春の祭典」などを振るので、11月はラトルとすれ違いで共に両オケを行き来するコンビ的な日程となる。

 オペラでは、やっと新シーズンの予定を発表したシュトゥットガルト歌劇場が久々意欲的な戦略に出る。11月は初演70周年にあたるパウル・デッサウの「ルクルスの非難」を現代音楽のスペシャリスト、ベルンハルト・コンタルスキーの指揮でプレミエ上演。その上、新しいコンセプトのワーグナー「リング」をコロナ禍の完全収束も見込めないこの秋にスタートさせるという破格の決断。例によって演目によって演出家の異なる「リング」になるようだが、最初の「ラインの黄金」は1幕なので演出家1人で済むが、次回「ワルキューレ」は、何と各幕毎に違う演出家が担当するとのこと。現代オペラ芸術の最先端を標榜するシュトゥットガルト歌劇場が果たして復活するのか?

 その他の注目公演は、もうスペース的に羅列となってしまうが、ベルリン・ドイツ・オペラでコロナのために延期されていたワーグナー「神々の黄昏」プレミエ、シェフとしての最後のシーズンにコスキーが演出するヴァイル「マハゴニー市の興亡」(ベルリン・コーミッシェ・オーパー)、ベルリン・フィルを振るペトレンコ、ソヒエフ、フルシャの指揮者陣(ソヒエフはコンセルトヘボウ管の公演も要注目)、ナガノ指揮のR.シュトラウス「エレクトラ」プレミエ(ハンブルク州立歌劇場)、同じナガノがコンチェルト・ケルンと共に上演するワーグナー「ラインの黄金」(ケルン・フィルハーモニー)、パリ・オペラ座(ガルニエ宮)でのヘンデル「アルチーナ」(ヘンゲルブロック指揮)、パリ・オペラ・コミークのエルサン「稲妻」、モネ劇場でハンニガンの出演するベルク「ルル」等々、今月も書き切れないうちに終了。

(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)
(ぶらあぼ2021年8月号より)