日本を代表する名酒「獺祭」の生みの親が、オーケストラの理事長に!

日本センチュリー交響楽団 新理事長に桜井博志(旭酒造株式會社 会長)が就任

 7月1日(木)、大阪府豊中市のセンチュリー・オーケストラハウスにおいて、日本センチュリー交響楽団新理事長就任記者会見が開催された。会見には、新理事長に就任する桜井博志、前理事長の水野武夫(共栄法律事務所)、副理事長兼楽団長の望月正樹が登壇した。

日本センチュリー交響楽団会見
左より:望月正樹、桜井博志、水野武夫

 まず、副理事長の望月から理事長交代の経緯が説明された。
「水野前理事長には、橋下府政の厳しい最中に就任していただき、12年以上という長い間楽団を牽引し続けてきてくださいました。ただ、ご本人からもそろそろ交代を、というお話がでてきて後任の模索をしてきました。そんななか首席指揮者の飯森範親と親交があった桜井新理事長とお会いする機会があり、それがのちに交響曲 獺祭プロジェクトにつながっていきました。その後も桜井理事長と接するたびに、企業を率いていく手腕、バイタリティを強く魅力に感じ、センチュリーを引っ張って盛り上げていってほしい、とお願いをしたところお引き受けいただくことができました。コロナ禍において唯一成功を収めることができた獺祭プロジェクトは、今後新たなセンチュリーを切り開いていく上で意味のあるプロジェクトでした。今後も、この成功例を引っさげて桜井新理事長と頑張っていきたいと思います」

望月正樹 副理事長兼楽団長

 獺祭プロジェクトとは、2019年にスタートした壮大な企画。まず酒を仕込むときに聞かせる交響曲を作曲し、それをオーケストラで演奏・収録し、それを特殊なスピーカーで聞かせた日本酒を作るというものだ。今年2月にその完成記念のコンサートが行われた。当時、取材したレポートがあるので、それを参照されたい。

【関連記事】「交響曲 獺祭 ~磨migaki~」プロジェクト レポート  前編後編

 新理事長就任のあいさつに立った桜井は次のように語った。
「先月、この話をいただいたときには晴天の霹靂でした。私は山口県の山奥にある酒蔵の者で、それがオーケストラの理事長なんてできるのかと考えました。本当に人が少ない街にいる我々にとって、何が都市の魅力なのかと考えたときに“ライブの力”なんだと考えます。テレビで色々な情報に触れることができるが、ライブでの機会はなかなか少ない。でもそれはものすごく大事なこと。文化の発展に欠かせないこと。自分に務まるかはわからないけれどご支援をいただいて頑張っていきたい」
「財政的には黒字ではあるが、非常に厳しく苦しい運営状態であることは確か。これはセンチュリーだけでなく、日本中、世界中のオーケストラもとてつもなく大変な状況にある。それはしっかり認識している。ただ、こういうときにこそ新しい飛躍のチャンスがあると確信している。今、具体策のご説明はできないが、必ずやこの状況をバネとして飛躍していきたい」

 また、音楽と酒の共通点について次のように述べた。
「どちらも“生存”という意味では必ずしもなければいけない、というものではない。ただ、人生には感動が必要で、音楽やお酒がもたらす喜びは明日へのエールになっていくものだと思う」

桜井博志 新理事長

 8月には、獺祭プロジェクトの東京公演がグランドプリンス新高輪 飛天の間で、そして、旭酒造の地元・岩国で日本センチュリー交響楽団の特別演奏会が予定されている。岩国での演奏会は「世界の医療従事者に届ける感謝の響き」という副題がつき、医療従事者を無料招待するという。

 獺祭は、すでに日本を飛び出し、2018年にパリにジョエル・ロブションとコラボレーションした店を出店したり、ニューヨークに醸造所を建設していたりと世界にファンを広げている。日本酒の未来を切り開いている桜井の理事長就任をきっかけに、クラシック音楽界全体へも新しい風を吹かせてくれるのではないか、そんな期待を抱いてしまう嬉しいトピックだ。


【Profile】
桜井博志 Hiroshi Sakurai (旭酒造株式會社 会長
1950年、山口県周東町(現岩国市)生まれ。1973年に松山商科大 学(現松山大学)を卒業後、西宮酒造(現日本盛)での修業を経て76年に旭酒造に入社したが、先代である父と対立して退社。父の急逝を受けて84年に家業に戻り、純米大吟醸「獺祭」の開発を軸に経営再建を果たす。杜氏を設けずデータ化した製造法でおい しさを追求し、世界的な評価を受けている。2016年から現職。18年4月、パリにジョエル・ロブション氏との共同店舗を開店、ニューヨークでも醸造所を建設中。

【Information】
●東京公演
交響曲 獺祭~磨migaki~五感で味わうコンサート
2021.8/18(水) 18:00 グランドプリンスホテル新高輪 飛天

指揮:和田薫(飯森範親から変更 ※8/13主催者発表) 
和田薫:祝響~日本センチュリー交響楽団のためのファンファーレ~(曲目変更 ※8/13主催者発表)
和田 薫:交響曲 獺祭〜磨migaki〜(委嘱作品)

●岩国公演
獺祭Presents 日本センチュリー交響楽団 岩国特別演奏会

~世界の医療従事者に届ける感謝の響き~
2021.8/22(日) 15:00 シンフォニア岩国 公演延期
指揮:飯森範親
ヴァイオリン:中村太地
ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲 
ヴォーン・ウィリアムズ:「グリーン・スリーヴス」による幻想曲 
バーバー:弦楽のためのアダージョ 
リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲

【関連記事】
「交響曲 獺祭 ~磨migaki~」プロジェクト レポート 前編後編

日本センチュリー交響楽団
https://www.century-orchestra.jp

旭酒造
https://www.asahishuzo.ne.jp