反田恭平が奈良県に新会社を設立

 ピアニストの反田恭平が、Japan National Orchestra株式会社(以下、JNO)を設立した。工作機械大手のDMG森精機株式会社の出捐により設立され、国内外で助成・支援活動を行っている一般財団法人森記念製造技術研究財団と、自らが代表を務める株式会社 NEXUSの出資により実現。代表は反田とDMG森精機 専務執行役員の川島昭彦が務め、反田とJNO所属ソリスト17名で構成される。JNOは、DMG森精機の創業地・奈良を本拠地に、持続的で発展的な音楽活動を行い、将来的にはアカデミーの創設も目指しているという。

反田恭平

Japan National Orchestra のめざすこととして、下の4項目が挙げられている。

1. 音楽家自らが株式会社設立し、活躍の場の創出し、持続的かつ発展的な活動を確実にする 
2. 志のある音楽家が、安心して音楽を学び、音楽活動に専念できる環境の確保
3. 奈良中心に地域社会に親しまれ、愛されるオーケストラを目指す
4. 2030年にアカデミー(音楽院)を創設

事業の柱は3つ。

1. コンサート
 奈良、東京の定期公演を中心に、メンバー個々人のリサイタルシリーズ・全国ツアーを行う

2. 音源制作
NOVA Record にてオーケストラ及び、各メンバーの音源の制作及び配信を行う

3.オンラインサロン Solistiade(ソリスティアーデ)
若手演奏家を中心とした音楽サロン。学校では学ぶことのできない音楽や楽器の話、映像を用いた楽曲解説やレッスン、クラシック音楽の奥深さ、楽しみを体験できる。

 5月24日、反田と川島の2人が出席し、東京オペラシティからオンラインによる記者会見が開催された。

Japan National Orchestra リハーサルでの演奏の様子

会社設立について反田はこれまでの歩みを交えて次のように語った。

「2018年、MLMダブル・カルテットという9人のメンバーで、ここオペラシティにおいて開幕旗揚げ公演を行いました。さらに翌年、人数が16名に増えたMLMナショナル管弦楽団として全国ツアーを回り、サントリーホールをはじめチケットが完売になった公演もありました。その時にレーベルも立ち上げ10種類のCDを一斉同時にリリースし、販売時にサントリーホール付近に1,000人近い行列もできたと聞いています。2021年2月から3月にかけては、佐渡裕マエストロ指揮のもとJapan National Orchestraと改名し、全国ツアーを開始しました。そして2021年5月20日、満を持してJapan National Orchestra株式会社を設立いたしました。
 今、世界的に大変な時代のなかで、より音楽に没頭して生活をしたい、そして音楽に人生を捧げたいという同志を集めました。彼らのコンサートや活動、メディアへの露出など色々なことを手伝い、自分自身も成長していけたらと思い、友達や先輩後輩に声をかけ、これからともに舵を切っていきたいと思っています」

さらにアカデミーについても意欲的だ。

「2030年くらいに、僕の人生の最大の目標のひとつでもある学び舎を日本に作りたいと考えています。僕自身、海外に留学していろいろ気づきがありましたが、日本から発信する学び舎があっていいのではないかと思いました。そしてこのオーケストラはゆくゆく学校の専属のオーケストラにきっと姿を変えられると思います」

記者会見の様子 左:川島昭彦(DMG森精機 専務執行役員) 右:反田恭平

また、奈良という場所についても前向きに捉えている。

「全国47都道府県のうちでもっともピアノの保有率が高いのは奈良県というデータがあります。そして将来もし学び舎を作ることができるのであれば、やはり自然豊かな町、そして歴史があるところがいいと考えていました。10年20年経って奈良に楽器を背負って歩いている子どもたちや、大人の方々が増えていればいいなと強く思っています」

 反田は「今、話せることはこのくらい…」と前置きつつ、今後の展望としてワールドワイドな指揮者の招聘、外国人もメンバーに加え3年以内にはオーケストラの人数を倍に、そしてワールドツアーも視野に入れているなど、飛躍のイメージは尽きないようだ。ピアニストという枠に収まらず、指揮に、教育に、さらには経営まで。多彩な能力と強い発信力で、ボーダーレスな活躍が期待される。

Japan National Orchestra
https://www.jno2021.jp