歴史までが共鳴する“想”の音
「明治以来、邦楽と西洋音楽の様々なコラボレーションが行われてきたが、新たな実体を持つ和と洋の合一は、簡単に実現できなかった」。1991年に第1回芥川作曲賞を受賞し、世界各国で作品が演奏されている作曲家の高橋裕は言う。今回は、そんな高橋が3つの自作を自ら指揮し、オーケストラ・アンサンブル金沢と石川高(笙)ら邦楽師との共演から、新たなる響きを紡ぎ出そうと試みる野心的なステージだ。笙の響きへオーケストラの管楽器が重なっていく「風籟」(1992)、ルーツを同じくする琵琶とヴィオラの位相の違いから融和までを描く「二天の風」(2013)、無駄を削ぎ落とす能と重層的なオーケストラを対峙させる「葵上」(2006)、多様な側面から和洋の新たな響きを提示する作品は、いずれもアンサンブル金沢からの委嘱作。そして、公演が行われる文京区は、加賀前田藩が江戸藩邸上屋敷を構えた地でもある。「由緒正しき縁の地での演奏会は、大きな意味を持つ」と高橋。歴史までが共鳴する、貴重な経験ができそうだ。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2014年3月号から)
★3月26日(水)・文京シビックホール Lコード:31582
問:東京コンサーツ03-3226-9755
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