人形とバロック音楽で描く情念の世界
ひとり芝居と人形劇を融合させた独自の表現方法を確立し、自ら脚本・演出・音楽・美術なども手掛けた作品を各地で上演している孤高のアーティスト、たいらじょう。人形と自身の存在を巧みに遣い分け、観客のイマジネーションを刺激して舞台上にドラマを創出するパフォーマンスは、実際に体験した者だけが享受できる魔法の世界だ。
0〜2歳を対象とした「シアタースタートプログラム」やファミリー向け作品にも定評があるが、近年は総合芸術として敢えて“R-15指定”を打ち出した長編作品の上演が相次ぐ。なかでも東京文化会館小ホールで初演される《王女メディアの物語》は、身近な素材である段ボールのみの美術で挑む初の大人向け作品。18世紀末にケルビーニもオペラの素材としてとりあげたことで知られるギリシャの古典的名悲劇が原作なだけに、そこからいかにして、人形だからこそ表現できる「狂気の中に秘められた人間の姿」を浮き彫りにしてくれるのか大いに期待したい。また今作ではたいら作品としては初となる、全編を通して生演奏とのコラボが実現することも注目。当日はレザール・フロリサンなどで活躍するセバスティアン・マルクが音楽監修とリコーダー奏者として参加し、アンサンブル・レ・ナシオンのメンバーと共に独創的な劇の進行にあわせて、バロック時代の様々な作曲家の作品が奏でられるとか。古楽ファンもぜひこの機会に!
文:東端哲也
(ぶらあぼ2014年2月号から)
★3月1日(土)・東京文化会館(小) Lコード:34256
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650
http://www.t-bunka.jp