豊嶋泰嗣のモーツァルトのヴァイオリン協奏曲集の完結編。豊嶋と大阪交響楽団は協演も多くて相性がよく、弾き振りのオケ部分も丁寧に作られている。協奏曲第3番の冒頭の弦が爽やかで美しい。独奏部分は端正でイントネーションが清潔でモーツァルトにぴったり。緩徐楽章は上品なノットルノの風情で歌い回しもきれい。第4番の入り組んだ楽想の処理、華麗な技巧と転調の味わい、入念なカデンツァなど聴きものだ。協奏交響曲では、豊嶋がヴィオラにまわり、林七奈との絶妙なアンサンブルを楽しませてくれる。コンチェルトーネは珍しい曲で、若書きながら、隠れた佳品であることを実感させる。
文:横原千史
(ぶらあぼ2020年12月号より)
【information】
SACD『モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番、第4番/豊嶋泰嗣&大阪響』
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番、同第4番、2つのヴァイオリンのためのコンチェルトーネ ハ長調、ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 他
豊嶋泰嗣(指揮/ヴァイオリン/ヴィオラ)
林七奈(ヴァイオリン)
大阪交響楽団 他
収録:2017年8月、ザ・シンフォニーホール(ライブ) 他
オクタヴィア・レコード
OVCL-00737(2枚組) ¥3500+税