ヤンソンスの最後の公演となった昨年11月8日、カーネギーホールでのライブ。21世紀に入りヤンソンスの指揮はエネルギッシュで情熱的なものからどっしりと構えた巨匠風のそれへと変わっていったが、バイエルン放送響の首席に迎えられ腰を据え取り組めるようになったことが大きかったのではないか。本公演は最後まで指揮ができるか、団員も分からないほど緊迫した状況下で行われたようだが、それでも両者が深い絆の下に築いてきた、大らかで落ち着きのある懐の深い音楽がしっかりと鳴っている。アンコールのハンガリー舞曲は荘厳な表情を湛え、その後の悲劇を予感し身構えているかのようだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2020年12月号より)
【information】
CD『マリス・ヤンソンス ラスト・コンサート/ヤンソンス&バイエルン放送響』
R.シュトラウス:歌劇《インテルメッツォ》からの4つの交響的間奏曲/ブラームス:交響曲第4番、ハンガリー舞曲第5番(パーロウ版)
マリス・ヤンソンス(指揮)
バイエルン放送交響楽団
収録:2019年11月、ニューヨーク(ライブ)
BR KLASSIK/ナクソス・ジャパン
NYCX-10174 ¥2500+税