植物の葉と茎の電位変化から得られたデータを音に変換、枝葉を広げるように創作を重ね、また違う楽器へと変態させるユニークな創造を、藤枝守はもう四半世紀も続けている。ゴシック・ハープとチェンバロ、二つの古楽器を操る手練れ・西山まりえが2014年の第一弾に続き再びこれに挑戦した。情報を(おそらくは)旋法的に読み換え、操作することで出現するのは、文様のように終わりなく浮遊する実に不思議な時空間だ。それはルネサンス音楽の記憶をこだまさせながら、パターンごとに異なる肌触りで聴き手を優しく包みこむ。いつの間にか、空想の森の新鮮な空気の中へと解き放たれていた。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2020年8月号より)
【information】
CD『藤枝守:ルネサンスの植物文様/西山まりえ』
藤枝守:植物文様第8集 pattern B、同26集「茶の文様」よりpattern B「矢部」、同第27集「台湾茶曲集-Ⅰ」pattern A〜D、同第20集「ベゴニア・イン・マイ・ライフ」 pattern B・pattern D、同第22集「ハーンの向日葵」pattern D、植物文様ソングブック第1番「蘭の名前」より〈パフィオペディラムの奴隷〉 他
西山まりえ(ルネサンス・ハープ/チェンバロ)
OMF
KCD-2070 ¥2545+税