エリック・ハイドシェック (ピアノ)

スマートな感性は喜寿迎えても健在

 エリック・ハイドシェックが、2年ぶりに来日する。コルトーに才能を見いだされ、その死の年まで指導を受け続けた彼は、往年の巨匠のピアニズムを今に伝える貴重な存在だ。エネルギーに満ち、人生を楽しんでいる…そんなオーラが音楽にそのままにじみ出ているこのピアニストも、今年で77歳を迎える。日本では喜寿と呼ばれる節目の年、彼が用意したのは実に詩的なプログラムだ。
 冒頭、ヘンデルの前奏曲3曲とバッハの平均律から2つの前奏曲を交互に演奏。続けてハイドンのソナタ第58番、モーツァルトのソナタ第4番から「アダージョ」、そしてベートーヴェンのソナタ第5番や「6つのバガテルop.126」を合わせる。ハイドシェックらしい趣向をこらした選曲だ。ドビュッシーでは、前奏曲集から四季をテーマとした曲を披露。スマートなハイドシェックの感性がきらりと光る。
 温め続けたレパートリーを組み合わせ、自由な感性で構築したストーリー。その導きに身を任せ、フランスのエスプリがきいた世界を堪能する一夜となりそう。
文:高坂はる香
(2013年ぶらあぼ12月号から)

★11月29日(金)・東京文化会館(小)
問 コンサートイマジン03-3235-3777 http://www.concert.co.jp