熱気に溢れる「第九」で1年を締めくくる
毎年12月の恒例となっている、小林研一郎と日本フィルハーモニー交響楽団の「第九」公演。今年は3会場で5公演開催される。近年はいっそうの円熟味と、安定感のある演奏を聴かせている小林。何度も「炎のコバケン」の愛称を持ち出すのも恐縮なくらいだが、その尽きない情熱こそが彼の演奏の土台であり、熱心なファンを獲得してこれほどの公演を継続させるパワーともなっている。「名曲は何度取り組んでも発見の連続」と常々語る小林のベートーヴェンは、毎回作品の持つエネルギーを最大限に引き出して、聴く人の興奮を誘う。“これぞ年末の「第九」!”という堂々たるベートーヴェンを味わいたいなら、うってつけの公演だ。
出演歌手陣も豪華な顔ぶれ。組み合わせは公演日によって変わるが、ソプラノにザリナ・アルティエンバエヴァ、市原愛、アルトに加藤のぞみ、山下牧子、テノールに錦織健、バリトンに青戸知、青山貴と、どの日も劣らぬ名歌手たちの共演が楽しめる。合唱は東京音楽大学、武蔵野合唱団、日本フィルハーモニー協会合唱団の公演ごとの競演となる。
この5公演でもうひとつ注目されるのは、全日ともコンサート前半に名オルガニストの石丸由佳が、ブルーンス「前奏曲ホ短調」、ブクステフーデ「甘き喜びに包まれ BuxWV197」、J.S.バッハ「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565」の3曲を演奏すること。有名なバッハ作品をはじめ、各会場のオルガンの雄大な響きを、名手の演奏でじっくり味わうことができる好機となる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2019年12月号より)
2019.12/21(土)14:00 横浜みなとみらいホール
12/24(火)19:00、12/26(木)19:00、12/28(土)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
12/27(金)19:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
https://www.japanphil.or.jp/
※「第九」公演全日程の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。