藤田真央の新譜はショパン作品集。4つの即興曲と4つのスケルツォ、そして「演奏会用アレグロ」op.46という珍しい作品をアルバム中央に配した。透明感から深みまで多彩な音色を聴かせる即興曲、さりげなくコントラストの効いたテンポ設計のスケルツォ、白眉は何と言っても、勇壮さとロマンティシズムを併せ持ち、長大さをものともせず見事にまとめ上げた大曲のアレグロ。縦軸(声部ごとの立体感)と横軸(移り行く和声感・旋律の語り)それぞれのダイナミックレンジの解像度も精密かつ精彩で驚かされる。音楽への誠実さと閃きとが共存する優れた演奏。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2019年12月号より)
【information】
CD『ショパン:スケルツォ、即興曲/藤田真央』
ショパン:即興曲第1番〜第4番(幻想即興曲)、演奏会用アレグロ(協奏曲のアレグロ)、スケルツォ第1番〜第4番
藤田真央(ピアノ)
ナクソス・ジャパン
NYCC-27311 ¥2500+税