ソロとオーケストラで活躍する若き達人の技を聴く
オーボエの荒川文吉は、東京藝大4年在学中だった5年前に東京フィルハーモニー交響楽団に入団、同大学院修士課程を修了し、現在は首席奏者を務めている日本楽壇の期待を担う逸材。多彩な表情を持つ佳品を厳選したリサイタルで、その美音と幅広い表現力を存分に発揮する。
ステージでは、同い年の俊英・黒岩航紀が、ピアノとチェンバロを弾き分けて共演。まずは、フルート作品ながら、オーボエでもよく演奏されるバッハの「ソナタ ホ長調 BWV1035」を。そして、締め括りには、ナチス・ドイツによって、強制収容所で命を落とした20世紀チェコのパヴェル・ハースによる「組曲」を置いて、枠組みを形作った。
ここへ、イタリアのニッコロ・カスティリオーニの「アレフ」やスイスのダニエル・シュニーダーのソナタ、ドイツのディルク=ミヒャエル・キルシュによる無伴奏作品「ガニュメート」、山中惇史への委嘱新作の初演など、現代の作品を織り込んでゆく。オーボエによる表現の多様性を知らしめる、意欲的かつ野心的なプログラムだ。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2019年9月号より)
2019.10/1(火)19:00 ヤマハホール
問:オーパス・ワン042-313-3213
http://opus-one.jp/