METライブビューイング 2013/14シーズン

巨匠レヴァインも復帰!世界のトップスターが集結する多彩な10演目

メトロポリタン歌劇場(通称MET=メト)の最新公演を映画館の大スクリーンで楽しむ「METライブビューイング」。2013/14シーズンのラインナップが発表されているが、最大の話題は、音楽監督ジェイムズ・レヴァインの復帰であろう。健康に不安のあったレヴァインは、2011年に療養のため、取り組んでいたワーグナーの《ニーベルングの指環》を途中で降板し、以降の指揮活動を休止した。それでも13年5月にMETオケの演奏会で指揮活動を再開。そして2013/14シーズンからオペラに本格復帰する。復帰の演目は、レヴァインが最も得意とするヴェルディとモーツァルトの作品から、《ファルスタッフ》と《コジ・ファン・トゥッテ》。《ファルスタッフ》は、ロバート・カーセンによる新演出。洗練された美しい舞台が楽しめることだろう。《コジ・ファン・トゥッテ》では、ダニエル・ドゥ・ニース、マシュー・ポレンザーニら若手注目株が巨匠の指揮のもと、アンサンブル・オペラに取り組む。

《コジ・ファン・トゥッテ》photo by Marty Sohl
《コジ・ファン・トゥッテ》photo by Marty Sohl

オープニングは、今や“METの女王”というべきアンナ・ネトレプコが登場するチャイコフスキーの《エフゲニー・オネーギン》。マリウシュ・クヴィエチェンがオネーギンを担う。指揮はロシアの巨匠ワレリー・ゲルギエフ。英国出身の女性演出家デボラ・ワーナーの新演出も楽しみ。ショスタコーヴィチの斬新な《鼻》では、世界的芸術家ウィリアム・ケントリッジのユーモア溢れる演出と《南太平洋》でトニー賞主演男優賞を獲得した、パウロ・ジョットの歌と演技に注目。プッチーニの名作《トスカ》は、パトリシア・ラセットとロベルト・アラーニャの美声が光る。ドヴォルザークの《ルサルカ》には、METの大スター、ルネ・フレミングが登場し、水の精ルサルカを演じる。ボロディンの《イーゴリ公》は、「だったん人の踊り」で知られるロシア歴史絵巻。新演出を担うのは鬼才ディミトリ・チェルニアコフ。日本でもボリショイ・オペラの《エフゲニー・オネーギン》を手がけ話題となった。マスネの《ウェルテル》では、世界が注目するスター・テノール、ヨナス・カウフマンが出演。イギリス演劇界の巨匠リチャード・エアによる新演出。フランコ・ゼッフィレッリ演出のプッチーニの《ラ・ボエーム》はMETで最も人気の高い演目の一つ。今シーズンは、人気急上昇中のヴィットーリオ・グリゴーロとアニータ・ハーティッグの新鮮なカップル。シーズンの最後はオペラ版シンデレラのロッシーニ《ラ・チェネレントラ》。現代最高のロッシーニ・テノールのフアン・ディエゴ・フローレスとジョイス・ディドナートの共演は見逃せない。

文:山田治生
(ぶらあぼ2013年10月号から)

《鼻》photo by Ken Howard

★11月2日(土)の《エフゲニー・オネーギン》を皮きりに、東劇・新宿ピカデリー(東京)ほか全国17の映画館で上映。
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