中部ドイツ・アルテンブルク城の聖堂内にある、名工トロスト作のオルガン(1739年)は、完工時にバッハも試奏した銘器。欧州各国の名オルガンに触れてきた名手・椎名雄一郎は今回、このオルガンに対峙し、時を超えて守り継がれてきた音色で、バッハがオルガニストとして紡いだコラールの世界を掘り下げる。まずは、「前奏曲とフーガ」2曲と「パルティータ」を枠組みに。椎名は、これら規模の大きな作品で、楽器を鳴らし切るダイナミックな快演を聴かせる一方、合間に配したコラール編曲や幻想曲を慈しむように奏で、その表現法やハーモニーの多様性を知らしめる。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2019年7月号より)
【Information】
CD『バッハ オルガン・コラールの世界〜アルテンブルク城教会のトロスト・オルガン〜/椎名雄一郎』
J.S.バッハ:前奏曲とフーガ ホ短調BWV548、同 ハ短調BWV546、コラール編曲「心よりわれは求めん」BWV727、幻想曲「イエスよ、わが喜び」BWV713、コラール・パルティータ「ようこそ、慈しみ深いイエスよ」BWV768 他
椎名雄一郎(オルガン)
コジマ録音
ALCD-1186 ¥2800+税