ロシアの巨匠の伝統を受け継ぐマエストロが壮大に描くグラズノフ
新日本フィルが本拠地すみだトリフォニーホールで行う定期演奏会〈トパーズ〉、4月にはロシアの重鎮ワシリー・シナイスキーが再登場する。レニングラード音楽院で数々の名指揮者を育てた伝説の教師イリヤ・ムーシンのもとで学び、1973年にカラヤン・コンクールに優勝して国際的にデビュー。その後ボリショイ劇場の音楽監督を始め、半世紀以上にわたり要職を歴任してきた。派手さこそないが、びしっと締まったサウンドで筋の通った音楽を構築。日本のオケともロシア系のレパートリーでたびたび名演を聴かせており、着実な人気を持つ。
2016年の新日本フィルとの初共演ではショスタコーヴィチとチャイコフスキーを取り上げたが、今回は違った組み合わせのスラヴ・プロで攻めている。前半は宮田大との共演でドヴォルザークの「チェロ協奏曲」。宮田はこの曲を大の得意としており、これまでにも多くの巨匠のタクトで演奏してきた。スケールの大きな彼のチェロが、ロシアの重鎮のもとどんな色合いを帯びるのだろうか。
後半はグラズノフ「交響曲第5番」。「英雄」という別名を持つこの曲は作曲家としての成熟期に入ってきたころの作で、がっちりとした構成を豊かな楽想が彩る。雄大な第1楽章に始まり、木管楽器が可愛らしくさえずるスケルツォ、ロシア的なメランコリーを湛えた緩徐楽章、吹奏楽的なサウンドが特徴的な終楽章まで聴きどころ満載だ。近年、グラズノフはラザレフやプレトニョフ、ヴェデルニコフら、ロシア人指揮者が相次いで取り上げており、日本にもずいぶん普及したが、新たにシナイスキーが代表的交響曲で参戦する。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年4月号より)
第604回 定期演奏会 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉
2019.4/19(金)19:00、4/20(土)14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp/