伝統の演目に新たな歴史が生まれる
オーケストラの伝統と指揮者の持ち味の佳き融合…そうした理想的なケミストリーを予感させるのが、2月の読響定期だ。指揮は名匠ローター・ツァグロゼク。1942年ドイツ生まれの彼は、ライプツィヒ歌劇場、シュトゥットガルト歌劇場等で先進的な手腕を発揮し、デッカの退廃音楽シリーズの録音でも高評価を得ている。読響とは2016年に初共演。ブラームス等のお国もので堅牢かつ力感に充ちた演奏を展開し、好評を博した。
今回のメインは、ブルックナーの交響曲第7番(ノヴァーク版)。読響にとっては、マズア、レークナー、朝比奈、尾高、G.アルブレヒト、スクロヴァチェフスキ、カンブルラン、下野ら所縁の深い指揮者のもとで演奏してきた特別な作品だ。これを、ドイツの伝統に根ざしながら、明晰で贅肉のないアプローチを身上とするツァグロゼクが振るとなれば、骨組みが明確で引き締まった、それでいて味わい深い快演が、耳に新たな喜びを与えてくれるであろう。
またリームの「Ins Offene…」の日本初演も行われる。同曲は客席側の5つの場所に楽器が配置されるという興味深い作品。カンブルランのもとで多様な現代曲を咀嚼してきた読響と、現代ものを得意とするツァグロゼクの特質が相まった、説得力抜群の表現が期待される。
なお本公演は、日下紗矢子がコンサートマスターを務める予定。08年からベルリン・コンツェルトハウス管の同職にある彼女は、首席指揮者だったツァグロゼクと4年間仕事を共にしている。それゆえ今回は、マエストロの意が高機能の読響にあまねく反映された演奏となるに違いない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2019年2月号より)
第585回 定期演奏会
2019.2/22(金)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
https://yomikyo.or.jp/