フライブルク・バロック・オーケストラとの来日ツアーで、名唱を聴かせてくれたばかりの英国のソプラノ、サンプソン。彼女の持ち味は、透明感だけを優先するのでなく、がっちり芯のある、時にしっかりとドスを利かせて歌い込むダイナミックさだ。劇的な感情の起伏を伴う、若きヘンデルによるイタリア語カンタータは、まさにうってつけの題材。圧倒的な安定感をベースに、繊細さと大胆さを巧みに出し入れ、燃え盛る情熱も、忍び寄る孤独も、余さず表現し尽くす。バックを担うキングズ・コンソートも、英国の古楽団体にありがちの穏健なイメージを裏切る、鬼気迫る凄演を披露する。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2018年12月号より)
【information】
CD『捨てられて〜イタリアのヘンデル/キャロリン・サンプソン&キングズ・コンソート』
ヘンデル:カンタータ「捨てられたアルミーダ」「炎の中で」「高貴なる望みの子」「死に瀕するアグリッピーナ」
キャロリン・サンプソン(ソプラノ)
ロバート・キング(指揮)
キングズ・コンソート
VIVAT/東京エムプラス
PVIVAT117 ¥2857+税