小泉和裕(指揮) 東京都交響楽団

名匠と俊英が醸し出すブラームスの深き味わい


 落ち葉に秋の深まりを感じる11月、東京都交響楽団が終身名誉指揮者である小泉和裕とともにオール・ブラームス・プログラムを披露する。曲はヴァイオリン協奏曲と交響曲第4番。ブラームスならではのロマンあふれる重厚な音楽に浸ることができる二大傑作が並んだ。
 ヴァイオリン協奏曲でソロを務めるのはレイ・チェン。1989年台湾生まれの若きスターだ。2009年のエリーザベト王妃国際コンクールにて出場者中最年少で優勝を果たした逸材だが、YouTubeやソーシャルメディアを大いに活用しながらファンを獲得してゆく姿勢は今の時代の演奏家ならでは。貴公子然とした風貌ながら、サービス精神にあふれたフレンドリーなキャラクターで人をひきつける。そんなフレッシュな感性の持ち主が、ブラームスのヴァイオリン協奏曲という名作中の名作にどう立ち向かうのか、大いに興味がわく。使用楽器は1715年製ストラディヴァリウス「ヨアヒム」。名器の美音も聴きどころだ。
 最後の交響曲である交響曲第4番は、ブラームスの創作活動のなかでも特別な位置にある名作と言っていいだろう。ロマン的な情熱を古典的な様式美といかに融合させるのか。その最良の回答がここにある。マエストロ小泉は「ブラームスの交響曲ほど難しい作品はない」と語る。作品の深さを知る大ベテランだからこその一言か。忘れがたい名演を期待したい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2018年10月号より)

第865回 定期演奏会 Cシリーズ
2018.11/7(水)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
第866回 定期演奏会 Bシリーズ
2018.11/8(木)19:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057 
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