ストラディヴァリウスとガダニーニで描く至高の無伴奏
演奏にじっくりと耳を傾けるべきヴァイオリニストであると同時に、発見の喜びへと導いてくれる優れたプランナーとしても注目したい音楽家、それが現在のヴィクトリア・ムローヴァだ。2016年の来日時、ガダニーニ(ガット弦)でJ.S.バッハの作品を、ストラディヴァリウスでプロコフィエフや藤倉大などの作品を弾き分け、無伴奏ヴァイオリン音楽の立体感および奥深さを聴かせてくれたのは、まだ記憶に新しいところ。「ヴァイオリンとの対話」と言うべき時間を作り上げ、聴き手とのコミュニケーションを図るという試みは、別世界を思わせる静寂を作り上げた。
今年10月の来日公演では、その冒険的な無伴奏リサイタルをもう一度、再現してくれる(16年に聴けなかった方は特に注目!)。10月21日の午後、ゆったりと落ち着いた空間が特徴のすみだトリフォニーホールで行われるのは、J.S.バッハと20〜21世紀の作品が巧妙に並べられたコンサート。ムローヴァはおよそ10年前、ガダニーニを弾いてJ.S.バッハの「無伴奏ソナタとパルティータ集」を録音し、その語り口にはさまざまな意見や感想が寄せられた。その録音を愛聴する方には、さらに新しいムローヴァの演奏に出会う楽しみが与えられるだろう。作品のコントラストや2つの楽器の音色など、発見の種は多様だ。同プログラムは10月19日に横浜・青葉台のフィリアホールでも聴くことができる。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ2018年10月号より)
2018.10/19(金)19:00 フィリアホール
問:パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831
http://www.pacific-concert.co.jp/
2018.10/21(日)15:00 すみだトリフォニーホール
問:トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212
http://www.triphony.com/