須関裕子(ピアノ)

引く手あまたの室内楽奏者が満を持してソロCDデビュー

Photo:Sho Yamada
 2月24日にデビュー盤『ラ・カンパネッラ』をリリースする須関裕子は、室内楽奏者として堅実なキャリアを積み、近年目覚ましい活躍を見せている。初のソロ・アルバムでは「いつも支えてくださった方々に感謝の思いを込めて」選曲し、リストの「愛の夢」、シューマン=リストの「献呈」などの名曲を収録した。低音でダイナミックな流れを作り、高音域のパッセージで立体感を生み出す。作品にあらたな息吹をもたらす迫力に満ちた演奏だ。
 小学生の頃から師事した寺西昭子にはピアニストとしての基礎を学び、大きな影響を受けたと語る。一方、室内楽での活躍のきっかけには、チェリスト堤剛との出会いがあった。堤が審査員を務めるチェロコンクールで、ピアノ伴奏をしていた須関に白羽の矢が立ち、堤のアルバム『オリオン』のピアノ奏者に抜擢された。
「堤先生は私にとって母校・桐朋学園の学長であり、卒業式で記念撮影をお願いするくらいの遠い存在。まさか演奏でご一緒できるなんて夢のようでした」
 その後もヴァイオリンの徳永二男や読響メンバーなど、第一線の奏者たちと共演を重ねてきた。
「堤先生も徳永先生も、その時その場に生まれたインスピレーションをもとに、音で力強く導いてくださいます。室内楽の勉強は、野平一郎先生の伴奏法講座に3年参加し、アナリーゼの勉強もしてきました。こうした経験が、ソロにも確実に活きていると感じます」デビュー盤からすでに貫禄をも感じさせる須関の演奏には、そんな裏付けがあったのだ。
 アルバムの中心軸はショパン。英雄ポロネーズやスケルツォの2番などを収録。舟歌は、「気持ちをしなやかに、常にフレッシュさを保たないと、重くなってしまう。流れを大切にしたい」と語る。
「ショパンは大好きな作曲家。16歳のときにチェルニー=ステファンスカ国際ピアノコンクールで優勝した際、ショパンの生家を含めポーランド各地で初リサイタルを開かせていただいたことも、ショパンへの思いが深まるきっかけとなりました。リスト、シューマン、ショパンは同時代を生きながら個性のまったく違う3人ですが、それぞれに『歌』を基調とした音楽性を感じます。ピアノは声楽と違って、音は出た瞬間から減衰していきますが、それゆえの儚さや、言葉を持たない音楽ならではの表現を追求していきたいです」
 アルバム発売記念のリサイタルでは、バッハのフランス組曲や、メンデルスゾーンの無言歌集から「春の歌」なども取り上げる。瑞々しい生演奏を通じ、名曲にあらたな発見をもたらしてくれることだろう。
取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ2018年3月号より)

須関裕子 CD発売記念 ピアノ・リサイタル
2018.3/3(土)15:00 スタインウェイ・サロン東京 松尾ホール
問:ムジカアニマンド事務局070-4456-4969

CD
『ラ・カンパネッラ』
マイスター・ミュージック
MM-4028 ¥3000+税
2018.2/24(土)発売