大野和士(指揮) 東京都交響楽団

20世紀初頭のウィーンに生まれたドラマティックな傑作2編

C)Rikimaru Hotta
 音楽監督大野和士のもと、都響が新年最初の定期演奏会で奏でるのは、20世紀初頭のウィーンで初演された音楽。R.シュトラウスの組曲「町人貴族」とツェムリンスキーの交響詩「人魚姫」という対照的な2つの作品が並ぶ。
 組曲「町人貴族」はモリエールの戯曲をホフマンスタールが翻案した劇のためにシュトラウスが作曲した付随音楽がもとになっている。もともとこのモリエールの劇はフランス・バロック期の作曲家リュリがコメディ・バレに仕立てているのだが、シュトラウスとしてはコンパクトな編成のオーケストラを用いて、擬古的な装いを持った洒脱な作品を書きあげた。
 一方、ツェムリンスキーの交響詩「人魚姫」は大編成のオーケストラを用いた後期ロマン派のスタイルで書かれた作品である。アンデルセンの童話『人魚姫』を題材としているが、濃厚なロマンティシズムを漂わせる起伏に富んだ表現は、一般にこの童話から連想される雰囲気よりもずっとスケールの大きなものだ。人魚姫の恋心と葛藤、絶望と救済が壮麗で幻想味あふれるオーケストレーションによって描かれてゆく。終楽章はとりわけドラマティックで、昇天のエンディングはワーグナーばりの「魂の救済」を思わせるほど。
 そろそろお正月気分も抜けた頃に、がっつりと聴くシュトラウスとツェムリンスキー。都響の精緻なアンサンブルが大いに耳を楽しませてくれることだろう。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2018年1月号より)

第846回定期演奏会 Bシリーズ 
2018.1/10(水)19:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057 
http://www.tmso.or.jp/