大野和士(指揮) 東京都交響楽団

名手たちが一体となって挑む20世紀最高峰のシンフォニー


 音楽監督3シーズン目も終わりに近づき、ますます共演に深みを増している大野和士と都響が、年明け早々の1月定期から20世紀音楽の金字塔、「トゥーランガリラ交響曲」に挑む。第二次世界大戦直後の荒廃した時代に、オリヴィエ・メシアンがそれまでの創造の総決算として作曲したもので、全10楽章80分近くに及ぶ長大な音楽には彼の音楽語法の全てが惜しみなく注ぎ込まれ、ピアノや8人の打楽器奏者に加え、電子楽器オンド・マルトノも大活躍する。
 現代音楽に大きな影響を与えた曲、と書くと何やら物々しいが、「トゥーランガリラ」がサンスクリット語で「愛の歌」を意味することからも分かるように、複雑な理屈が分からなくても感覚的に楽しめる音楽だ。もとよりメシアンの音楽では官能と聖性が表裏だが、特にこの曲ではピアノと弦、オンド・マルトノが密やかに睦みあう愛を巡る楽章と、荒々しく躍動的な楽章が交互に現れ、中間楽章(星たちの血の悦び)と終曲では熱狂的な歓喜に至る。戦争からの開放感が、メシアンをしてここまでに饒舌な音楽を書かせたのだろう。
 オンド・マルトノには日本の第一人者である原田節が、また終始派手に技巧を披露するピアノには幅広いレパートリーを誇るベルギーのヤン・ミヒールスが登場する。ミヒールスはこの作品に先立って、メシアンの弟子でスペクトル楽派の祖として知られるトリスタン・ミュライユが師を追悼したソロ曲「告別の鐘と微笑み」を取り上げる。鐘の音をはじめメシアンの語法や引用で彩られた美しい曲で、大作へのこの上ない食前酒になるだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2017年12月号から)

第847回定期演奏会 Aシリーズ
2018.1/18(木)19:00 東京文化会館
第848回定期演奏会 Cシリーズ
2018.1/20(土)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問 都響ガイド0570-056-057 
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