重唱のみの構成で傑作オペラを大胆にアレンジ
「オペラの醍醐味はアリアだけではなく、人が集まってこその重唱が本当に面白い!」(林美智子)。大胆にも、アリアをすべてカットして重唱と台詞だけで《フィガロの結婚》を再構成したのがメゾソプラノの林美智子(台本・演出も)。それでも音楽の魅力が失われないのがモーツァルトの天才だ。主役を降りたアリアたちも、その断片が即興的にピアノに登場したり鼻歌で歌われたりして、いわば薬味として香り付けに回る。
昨年3月に、同趣向の《コジ・ファン・トゥッテ》(2006年制作)を第一生命ホールで再演した際、ホールの音響やサイズが企画にぴったりだと、林とホール側が意気投合、今回の『フィガロ』が生まれた。
シンプルな衣裳やセット(椅子のみ)の中、大きな存在感を放つのが舞台正面の字幕スクリーンだ。たとえイタリア語を十分に理解していても、異なる内容の歌詞が並行して歌われる重唱では特に、この大きな字幕が役に立つ。
もちろん林も出演(ケルビーノ/バルバリーナ)。加耒徹、澤畑恵美、黒田博、鵜木絵里、池田直樹、竹本節子、望月哲也、晴雅彦と、豪華な実力派トップ歌手たちを絶妙な役どころで起用できるのも、オペラ界の最前線で活躍する林美智子プロデュースならではだろう。この手の上演に欠かせない“一人オーケストラ”河原忠之(ピアノ)がプロダクション全体を締める。クオリティの高い歌と芝居、そして美しいアンサンブルを楽しめるのが必然の顔ぶれが揃った!
文:宮本 明
(ぶらあぼ2017年12月号より)
2018.3/18(日)、3/21(水・祝)各日14:00 第一生命ホール
問:トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702
http://www.triton-arts.net/