デビュー10周年はラストに「火の鳥」を弾いた燃え尽きたいですね
「日本クロアチア音楽協会」代表として、20世紀初頭に活躍した同国初の女性作曲家ドラ・ペヤチェヴィッチから現代作曲家まで、知られざる作品群の魅力紹介という大役を務めつつ、独自の感性を持った華のあるピアニストとして様々なシーンで精力的に演奏活動を続けてきた安達朋博。今年は日本での本格的デビューから10周年にあたり、出身地の京都府京丹後市を皮切りに全国5ヵ所で開催されるリサイタルに掛ける意気込みにも、ひときわ熱がこもる。
「まずは渾身のショパンのピアノ・ソナタ第2番にご期待下さい。ショパンはピアノ弾きにとってあまりに王道の作曲家ゆえ、あえて避けるようなかたちで距離をおいていたのですが、ここに来て、もう誰に何を言われてもいいから、とにかく弾きたい! 自分で表現したい! という想いが強くなっているんです。今回、チラシやプログラムの曲目表記に『葬送』という副題をはずしたのは、“葬送”というイメージだけに囚われることなく、純粋に4楽章のピアノ・ソナタの傑作として先入観を持たずに聴いていただきたいからです」
ブゾーニ編バッハの「シャコンヌ」とラフマニノフのピアノ・ソナタ第2番は、高校時代にエフゲニー・ザラフィアンツの演奏を聴いて心を掴まれ、彼に師事するためにクロアチア留学を決意したという思い出深い楽曲。
「特にバッハ=ブゾーニの『シャコンヌ』を弾くのは学生時代以来かも。2作品とも当時憧れたザラフィアンツ先生のような、隅々まで目が行き届いて、一つひとつの音に意味があるスケールの大きな演奏を目指します」
もちろん6年前に杉並公会堂で本格的な公演を始めた時から、毎年欠かさず続けてきたペヤチェヴィッチ作品の披露も。
「今年は2011年に日本初演したピアノ・ソナタ第2番を。その後も様々な機会に演奏してきましたが、その度に手応えを感じました。やはり彼女の集大成的な作品です。ショパンやラフマニノフと並べても見劣りしない」
そしてラストはアゴスティ編曲のストラヴィンスキー「火の鳥」で締める。
「デビュー10周年リサイタルの最後はサントリーホールの大ホールで飾ろうと決めていました。自分で電話してホールもおさえたんですよ(笑)。大きな会場でプレッシャーもありますが、幸運を呼ぶという伝説の“火の鳥”を描いたこの難曲を弾ききって燃え尽きたい! 本番まであとひと月、馴染みのない和声に戸惑いつつも奮闘中です」
いまはデビュー10周年の公演で頭がいっぱいだが、今後の夢はニューヨークのカーネギーホールとシドニーのオペラ・ハウスでの演奏(シドニー響との共演)とか。その日は案外、早く訪れるかもしれない。
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ2017年10月号より)
安達朋博 ピアノリサイタル
2017.10/1(日)14:00 京都府丹後文化会館(0772-62-5200)
2017.10/4(水)19:00 岡山/ルネスホール(岡山シンフォニーホール・チケットセンター086-234-2010)
2017.10/20(金)19:00 大阪/いずみホール(06-6944-1188)
2017.10/27(金)19:00 名古屋/三井住友海上しらかわホール(052-222-7117)
2017.11/3(金・祝)19:00 サントリーホール(プロアルテムジケ03-3943-6677)
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