最高峰のアカペラ芸術に浸る
もう長いこと恒例となっている、東京オペラシティでのスウェーデン放送合唱団の来日公演。世界最高峰の合唱団が頻繁に来日してその力を見せつけてくれるのは至福の喜びだ。指揮は前回と同じく、1978年オランダ生まれの首席指揮者ペーター・ダイクストラ。
今回は、20世紀の北欧と東欧の無伴奏作品を集めたプログラムを携えてやってくる。ペルト(エストニア)の「勝利の後」(1996/98)、サンドストレム(スウェーデン)の「新しい天と新しい地」(1980)、ペンデレツキ(ポーランド)の「ベネディクトゥス」(1993)と「アニュス・デイ」(1981)、ヴィカンデル(スウェーデン)の「すずらんの王様」(1920/46改)、そしてシュニトケ(ロシア)の「無伴奏合唱のための協奏曲」(1984〜85)。
一番の聴きどころはやはりシュニトケだろう。中世アルメニアの詩人グレゴリー・ナレカツィの『嘆きの歌の書』から取られたロシア語テキストによる約40分の大曲。スウェーデン放送合唱団には前首席指揮者のトヌ・カリユステと演奏した同曲の録音もあって、凄みすら感じさせるパフォーマンスは圧巻で言葉を失ってしまう(指揮のダイクストラにも、バイエルン放送合唱団との録音がある)。40年以上前のレコードに、「この上に何をお望みですか?」という、オールド・ファンには語り草の秀逸なコピーがあったが、まさにその言葉を彼らに贈りたい。合唱ファン必聴の一夜。
文:宮本 明
(ぶらあぼ2017年9月号より)
2017.9/14(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
http://www.operacity.jp/