“イマジネーション”が失われた時間をつなぎとめる
結成20周年となるNibroll(ニブロール)はつねにその時代の、ひりつくようなリアルを鋭く描きだしてきた。演出・振付の矢内原美邦は高速・高密度のダンス、高橋啓祐はダンサーの身体性を拡張するような映像、音楽のSKANK/スカンクは有機的なノイズも駆使する。いずれも長年の同志である。
今回はKAATとの共同制作で、膨大な記録(レコード)に関する作品だという。現代社会では日々、スマホやSNSなど、様々な方法、様々なメディアに写真や映像や音などが記録されている。天文学的な数だ。本来は流れ去るべきものたちの一瞬を捉えたそれら。矢内原は、「やがては曖昧なただの残像になっていくだろう」そして「失われた時間をつなぎとめてくれるのは私たちのイマジネーションだけかもしれない」という。
膨大に切り取られ記録され続ける瞬間と我々をつなぐイマジネーションとは何か。彼らだけが到達できる世界を楽しみに待ちたい。
文:乗越たかお
(ぶらあぼ2017年8月号より)
2017.8/29(火)〜 9/3(日) KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
問:チケットかながわ0570-015-415
http://www.kaat.jp/