アラン・ギルバート(指揮) 東京都交響楽団

現代版「千夜一夜物語」のシリアスなメッセージ

 生誕70年というアニヴァーサリー・イヤーを迎えたジョン・アダムズ。彼の“問題作”「シェへラザード.2」が世界初演コンビによっていよいよ日本初演される。東京都交響楽団の新シーズン開幕を告げる4月の定期演奏会(Aシリーズ、Bシリーズが同一プログラム)は、特別な興奮が待っているコンサートだ。リムスキー=コルサコフの名曲同様、『アラビアン・ナイト』のシェへラザード妃にインスパイアされた作品だが、アダムズはそれを女性に対するさまざまなハラスメントという問題に置き換え、現代社会へ警鐘を鳴らす。
彼は妃を「虐げられた女性」の象徴だと捉えたのだろう。抑圧からの解放を全4楽章の音楽で伝えるこの「劇的交響曲」は、リーラ・ジョセフォウィッツとアラン・ギルバートにより2015年に初演され、ジョセフォウィッツはノンサッチ・レーベルへ録音も行っている。シリアスなテーマではあるものの、曲調はプロコフィエフやウォルトン、ショスタコーヴィチなどを想起させるものだ。ドラマティックな流れの中に生まれては消えるさまざまな音楽が、聴き手の心に強いメッセージを刻印することだろう。
前半には、繊細極まりないオーケストレーションが施された、ラヴェルのバレエ音楽「マ・メール・ロワ」を。CD等ではわからない隠し味的な音や立ち上る香気など、貴重な生演奏ゆえのサウンドを、お聴き逃しなく。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ 2017年3月号から)

第828回 定期演奏会 Aシリーズ
4/17(月)19:00 東京文化会館
第829回 定期演奏会 Bシリーズ
4/18(火)19:00
東京オペラシティ コンサートホール
問:都響ガイド03-3822-0727
http://www.tmso.or.jp/