ダンスで迫るベートーヴェンの内面
ネザーランド・ダンス・シアターなどヨーロッパを中心に活躍した後、日本に拠点を移して活動している中村恩恵が、新国立劇場バレエ団のために新作を振り付ける。タイトルは『ベートーヴェン・ソナタ』。聴覚を失いながらも、交響曲からピアノ・ソナタに至るまで数々の名曲を残した作曲家ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの音楽に、そのドラマティックな人生を響き合わせようという試みである。
中村は、約2年前に貞松・浜田バレエ団にピアノ・ソナタ第14番「月光」で作品を創った時以来、ベートーヴェンに強く共感。今回は、作曲家の人生そのものであるソナタ形式のコンテクストの中で、大作曲家の人生をナラティブに語ると同時に、舞踊によるアブストラクトな世界との出会いを演出しようとするもの。自分に「おまえ」と呼びかけるベートーヴェンの日記に着想し、中村と名コンビを組んでいる首藤康之がルートヴィヒを、物語世界を引っ張るベートーヴェンを福岡雄大が演じ、二人一役の手法を取るのが注目される。ベートーヴェンの甥カールに井澤駿、その母ヨハンナに本島美和、ベートーヴェンの恋人ジュリエッタに米沢唯、「不滅の恋人」アントニエに小野絢子と、キャスティングも最強である。
「ベートーヴェンの美しく力強い音楽に力を得て“生きる喜び”を観客の皆様と共有したい」と中村は新たな出会いに挑戦する熱い思いを語っている。
文:渡辺真弓
(ぶらあぼ 2017年2月号から)
3/18(土)、3/19(日)各日14:00 新国立劇場(中) 1/21(土)発売
問:新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999
http://www.nntt.jac.go.jp/dance/