シューベルトとロシアの大曲で、卓越した音楽性を披露
10代のうちから、日本音楽コンクール、東京音楽コンクール、ピティナ・ピアノコンペティション特級など国内の主要コンクールで上位入賞を果たし、その伸びやかな音楽で飛躍の可能性を感じさせていた、ピアニストの桑原志織。現在、東京芸術大学で伊藤恵のもとで学ぶ21歳だ。2016年、スペインで行われたマリア・カナルス国際音楽コンクールで第2位に入賞し、改めて注目を集めている。
そんな彼女が、紀尾井ホールが今後の活躍に期待する才能を招いて開催する「紀尾井 明日への扉」シリーズに登場。魅力的なプログラムで、器の大きな音楽性を披露する。
まず楽しみなのは、桑原が今その音楽の探究に力を注いでいるという、シューベルトのピアノ・ソナタ第19番。シューベルト解釈で定評のある師直伝の表現を、フレッシュな感性とともに披露してくれることに期待したい。また、ストラヴィンスキー「ペトルーシュカからの3楽章」は、マリア・カナルスコンクールのステージで高い評価を得たというレパートリーだ。そしてメインとして後半に取り上げるのは、この演奏会のために取り組んでいるというムソルグスキーの「展覧会の絵」。彼女の持ち味である豊かな音、堂々とした音楽性は、ロシアものにきっとぴったり合うだろう。
桑原の高い技術と繊細な表現が、多方面から確認できる3作品が並ぶプログラム。2500円と、手ごろなチケット料金も嬉しい。今後さらなる活躍が期待される逸材の演奏を、この機会に聴いておこう。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ 2017年1月号から)
2017.3/15(水)19:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061
http://www.kioi-hall.or.jp/