気鋭のマエストロが切り開く新たなブルックナーの世界
日本フィルハーモニー交響楽団の新たな首席指揮者として注目を浴びるピエタリ・インキネンが、1月の東京定期演奏会でブルックナーの大曲、交響曲第8番に挑む。インキネンの首席指揮者就任後、初となる記念すべき東京定期が本公演。すでに多数の共演を重ねる同コンビなので、これが初の東京定期というのも意外に感じるが、門出の公演にブルックナーを持ってきたあたりは、新シェフの所信表明とでもいえるだろうか。インキネンにとって、ブルックナーが特別なレパートリーであることをうかがわせる。
フィンランドの俊英インキネンは、もとよりワーグナーやブルックナーといった重厚なドイツ音楽を好んでとりあげる指揮者である。2017/18シーズンからは、ザールブリュッケン=カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルの首席指揮者に就任することも決まっている。しかし、インキネンのブルックナーが、ドイツの伝統を受け継ぐような重々しく巨大な音楽になるかといえば、そこは微妙なところかもしれない。これまでの日本フィルとの共演から察するに、インキネンはブルックナーに重厚さだけではなく、透明感や精妙さを同時に求めているように思える。
ブルックナーの交響曲はいずれの作品にもこの作曲家特有の宗教的な恍惚感があふれているが、なかでもこの交響曲第8番は格別。インキネンと日本フィルが独自の美の世界を切り開いてくれることを期待している。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ 2017年1月号から)
第687回 東京定期演奏会
2017.1/20(金)19:00、1/21(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
http://www.japanphil.or.jp/