矢代秋雄と20世紀フランスの名作を体感
日本を代表する名匠、秋山和慶が桂冠指揮者を務める東京交響楽団とともに意欲的なプログラムを組んだ。
プログラムの中心に置かれたのは今年没後40年を迎えた矢代秋雄のピアノ協奏曲。八面六臂の活躍をくりひろげる名手、小菅優が独奏を務め、高度な技巧と表現力を要求される日本の名作に挑む。
この矢代秋雄作品をはさんで演奏されるのは、矢代ゆかりのふたりのフランス人作曲家の作品。ひとつは矢代が師事したメシアンの交響的瞑想「忘れられた捧げ物」。矢代は東京音楽学校(現・東京芸大)を経て1951年から56年にかけてパリ国立音楽院に留学している。もうひとつは、矢代が敬愛し、影響を受けたというフローラン・シュミット。代表作であるバレエ音楽「サロメの悲劇」が演奏される。「サロメの悲劇」は1907年にパリで上演された作品。後期ロマン派の流れをくむ濃密で色彩豊かなオーケストラの響きが、強烈な陶酔感をもたらす。
これら3曲のプログラムを一度に実演で聴けるのだから貴重な機会というほかない。フローラン・シュミットからメシアン、矢代秋雄へと至る20世紀音楽の流れを体感できるのではないだろうか。秋山和慶と好調が続く東響の名コンビのこと、作品の魅力を十全に引き出してくれるにちがいない。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ 2016年12月号から)
第648回 定期演奏会
2017.1/14(土)18:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp/