西本智実(指揮) エルサレム交響楽団 西本智実 × マーラー

“聖地”のオーケストラが醸し出す深い響き

 80年近い歴史を持つユダヤの名門団体、エルサレム交響楽団。ガリー・ベルティーニが常任指揮者を務めたこともあり(現在はフレデリック・シャスラン)、巨匠音楽家との共演も多数。いよいよ初来日を果たし、その実力を披露する。
 日本ツアーを率いるのは、世界を舞台に活躍する西本智実。本人に直接話を伺う機会があったが、ユダヤ系の名音楽家たちから影響を受け続けてきたと述べ、「この共演は大きなこと。ついに念願が叶う」と力を込めていた。11月前半にエルサレムを訪れて同響と公演を行い、その成果を日本にそのまま持ち込む形になる。エルサレムはユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地でもあるが、「その多様な影響を体感し、現地の空気感なども想像していただける演奏にしたい」とのこと。
 メインはマーラーの交響曲第5番。西本の得意演目であるばかりか、同響にとってもユダヤ人マーラーは特別な存在。作曲者自身、1897年にユダヤ教からキリスト教に改宗し、ウィーンでの成功と挫折、アルマとの結婚を経て、1902年に完成したのが第5番。公私の複雑な感情が詰め込まれた大作を“エルサレムの”代表的なオーケストラで聴ける。熱演という以上の、真に貴重な体験となろう。
 前半はドヴォルザークのチェロ協奏曲で、ソリストはドミトリ・ヤブロンスキー。ロシア・フィルの首席指揮者も務める才人で、懐深い名演の期待大。また、ドヴォルザークとマーラー、両者とも出身はチェコのボヘミアという共通点があるが、同じ公演での組み合わせは意外と少なく、その妙味も注目だ。
文:林 昌英
(ぶらあぼ 2016年11月号から)

11/29(火)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:テンポプリモ03-5810-7772
http://www.tempoprimo.co.jp
※西本&エルサレム響の全国公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.tomomi-n.com