“知の巨人”の遺産を受け継ぐ
今年記念の年を迎えた日本の作曲家といえば? 没後20年を迎えた武満徹、没後10年の伊福部昭、そして柴田南雄の生誕100年&没後20年!
日本を代表する作曲家としてのみならず、音楽学者、音楽評論家としても活躍した柴田南雄。その著作やラジオ放送などを通じて蒙を啓かれた音楽ファンは多いはず。しかし、その作品の演奏機会となると、とても十分とはいえないだろう。そんな現状を見かねて、立ち上がったのが山田和樹だ。フルオーケストラと合唱を要する大作「ゆく河の流れは絶えずして」をはじめ、管弦楽のための「ディアフォニア」、シアターピース「追分節考」を、日本フィル、東京混声合唱団らとともに11月7日に演奏する。初めて柴田作品に触れた際に「人生損していた」と本気で思ったという山田和樹の熱い思いが、今回の公演を実現させた。3曲の共通項は「時間と空間の超越」だという。
「ゆく河の流れは絶えずして」とは、鴨長明の『方丈記』冒頭の一節。日本の古典を題材としつつ、古典派からロマン派、前衛まで、さまざまな音楽様式を駆使し、しかも会場全体を用いた即興的なシアターピースでもあるというこの大作は、1975年に初演され、以降89年に再演されたのみ。今聴くことで、その先駆性を改めて感じることになるかもしれない。日本人として、日本の音楽を再発見する好機が訪れた。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ 2016年10月号から)
11/7(月)19:00 サントリーホール
問:東京コンサーツ03-3200-9755
http://www.tokyo-concerts.co.jp