信頼し合う名コンビならではのベートーヴェンを愉しむ
クラシック音楽におけるブランド力というものがあるなら、チョン・ミョンフンと東京フィルのベートーヴェンは、すでにかなり高いレベルで信用を築いているのではないだろうか。指揮者自身が「現在の私たちの総決算」とコメントした交響曲全集のCD(2006年発売)から10年。ますます強固になった絆により、内面的に充実した音楽を聞かせるこのコンビだからこそ、“いま聴けるベートーヴェン”があるような気がしてならない。今年の7月定期では、チャイコフスキーの交響曲第4番やオペラ《蝶々夫人》といった、表面的な華やかさだけでは決して描ききれない作品を掘り下げて聴衆を熱狂させたが、9月定期はその感動を経てのベートーヴェンである。
3回の定期演奏会で軸になるのは交響曲第6番「田園」。作曲者自身が「感情の表出」であるとコメントしたこの交響曲は、自然のさまざまな形を通じて宇宙や愛を語り、最後は創造主である神へ感謝を捧げるという作品だ。各楽章の描き方こそが曲の味わい深さへとつながり、深い感動を終着点とした心の散策だといえるだろう。加えて、9月21日および23日は、ショパン国際ピアノ・コンクール優勝で脚光を浴びたチョ・ソンジンを迎えての「皇帝」。9月25日は、「田園」の5年後に初演された交響曲第7番を演奏。すべてがベートーヴェンの黄金像に圧倒されるようなプログラムであり、感動に震えながら帰途につける3日間となるだろう。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ 2016年9月号から)
第104回 東京オペラシティ定期シリーズ
9/21(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
第884回 サントリー定期シリーズ
9/23(金)19:00 サントリーホール
第885回 オーチャード定期演奏会
9/25(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
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