「第9番」でツィクルスの掉尾を飾る
飯守泰次郎&東京シティ・フィルによるブルックナー交響曲ツィクルスが、いよいよフィナーレを迎える。2012年から交響曲第4番「ロマンティック」、第5番、第7番、第8番と毎年1曲ずつが演奏されてきたこのツィクルスだが、最終回としていよいよ交響曲第9番が演奏されることになる。ツィクルスの掉尾を飾るにふさわしく、風格の漂う円熟味のあふれたブルックナーを披露してくれるのではないだろうか。
ブルックナーの交響曲第9番といえば、作曲者最後の交響曲であり、未完の交響曲。第4楽章は完成されていない。近年は補筆完成版もまれに演奏されるものの市民権を獲得したとはいえず、この演奏会でも通例通り、第3楽章で曲を終える。静かに消えゆくような幕切れは、そこまでで偉大な作品を味わい尽くしたという充足感を残し、その先の音楽を想像させない。その意味ではシューベルトの「未完成」と同じく、完成された未完の作という矛盾した存在といえるだろうか。
ブルックナーは第3楽章までを書いた時点で、もし曲が未完に終わった場合は、第4楽章に代えて自作の「テ・デウム」を演奏するように求めている。この日はその「テ・デウム」が前半に演奏される。東京シティ・フィル・コーアと、ソプラノの安井陽子やテノールの福井敬をはじめ、日本を代表する独唱者陣がそろう。
飯守&東京シティ・フィルのコンビによるブルックナーの集大成ともいうべき記念碑的な名演を期待したい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年6月号から)
第299回 定期演奏会
7/5(火)19:00
東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
http://www.cityphil.jp