メシアンの秘曲も披露するリサイタル、そして映画への参加も
メシアン夫妻との出会いをきっかけに、1970年代後半フランスに渡った菅野潤。メシアン夫人のイヴォンヌ・ロリオはじめ、フランス音楽の伝統を継承する先人たちとの出会いから洗練された音楽性を体得し、長らくパリを拠点に活動を続けている。
「新境地を拓く」と題して行われる今度のリサイタルでは、演奏家人生で常に傍らにあったモーツァルト、自身にとって新しい試みだというシューベルトのピアノソナタから最晩年の第20番、そして、メシアンの作品から日本初演となる「シラヒゲムシクイ」を演奏する。「シラヒゲムシクイ」は、メシアン研究の世界的権威であり菅野の友人でもあるピーター・ヒルが、2012年に手稿譜を発見した作品。1950年代の「鳥のカタログ」に次いで書かれ、未完のまま忘れられていたものをヒルが演奏会用に校訂した。今回は、メシアン作品に深い理解を持つ菅野の手による演奏が聴ける、貴重な機会だ。
一方、今秋には菅野が音楽を手掛けたドキュメンタリー映画『スネーク・ダンス』(SNAKE DANCE)(2012年/監督:マニュ・リッシュ)の全国公開(仙台・長崎他 全国5都市)が予定されている。核兵器の開発をめぐり、カメラは、ニューメキシコ州ロス・アラモス、コンゴ、そして東日本大震災後の東北地方などを訪ねる。菅野は、原爆投下直後の広島を目撃し、医師を務める父とともに出演。作中では、菅野の演奏によるベートーヴェンやショパンが流れる。核の時代を生きる人間社会について考察する作品。併せてチェックしておきたい。
文:高坂はる香
5/27(金)19:00 東京文化会館(小)
問:コンサートイマジン03-3235-3777
http://www.concert.co.jp
※映画『スネーク・ダンス』の公開情報は上記ウェブサイトでご確認ください。