東京文化会館 《響の森》コンサート vol.38 小林研一郎(指揮) 東京都交響楽団

真夏の夜に流れる北国の熱気と涼気

 コンサートが少なくなる8月に、日本屈指の指揮者、オーケストラ、ピアニストの演奏で、本格的な名曲を堪能できるのが、東京文化会館の「《響の森》vol.38」。同会館の音楽監督を務める“炎のコバケン”小林研一郎の指揮、常にハイクオリティのサウンドを聴かせる東京都交響楽団の演奏、デビュー30周年を迎えて充実を極める仲道郁代のソロで、グリーグのピアノ協奏曲とチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」が披露される。
 コバケンは、チャイコフスキーの作品を再三再四取り上げ、CDでも昨年、3度目の交響曲全集をロンドン・フィルとのコンビで完成。「悲愴」は通算4回録音している。彼のチャイコフスキーは、全力投球の熱気にあふれた、雄弁な大ドラマ。最新の録音では、70歳を超えての円熟味が加わり、スケールの大きさやこまやかな味わいを増している。今回はまず、この極め付けの“コバケンのチャイコ”を、立体的な響きが際立つ都響の演奏で聴けるのが、大きな楽しみだ。特に最後の交響曲「悲愴」は、複雑な感情が盛り込まれた名作。コバケン&都響なら、絶望と悲しみ、濃密なパッションをくまなく描き上げ、熱い感動をもたらしてくれるに違いない。
 また、近年ショパン、モーツァルト、ベートーヴェン等で評価の高い仲道だが、グリーグの演奏機会は多くない。作品に真摯に取り組み、深く掘り下げる彼女が、円熟の今いかなるアプローチを見せるのか? 似た表現になりがちな曲だけに、ここは新鮮な感触が期待される。
 真夏の夜に、北国ロシアのスケール感と北欧の透明な空気を満喫しよう!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年5月号から)

8/4(木)19:00 東京文化会館
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650
http://www.t-bunka.jp