
来る10月10日、北九州市立響ホールで特別なコンサートが開かれる。タイトルは分かり易く「華麗なる名曲とオペラ《椿姫》ハイライト」。人気の日本歌曲や名アリアが満載だが、チラシを眺めて「あ、アスリート系歌手の集い!さすが旧・体育の日!」と膝を打った。歌うこと、それは全身を使う運動そのものだが、今回出演の歌い手4人も、一流のスポーツ選手並みに節制怠らぬ名手たち。みな、ベテランだが、声も身体も変わらず若々しいのである。
まず、ソプラノ森谷真理は、超高音までまっすぐ伸びる響きできりっと歌い上げるタイプ。《椿姫》の主人公ヴィオレッタの毅然とした感は、彼女の勁(つよ)い声でこそ伝わるもので、恋人役のテノール西村悟(長身を誇る!)の熱く爽やかな歌声との相性も良いに違いない。また、父親役のバリトン加耒徹の理知的かつ濃厚な歌い回しは、ドラマの「悲しき敵役」に打ってつけのもの。彼が舞台に立つと、穏やかな印象から一変、ただならぬ凄みが出て目が離せないのである。
そして、このハイライト版の考案者たるメゾソプラノ林美智子は、高音域まで響き渡る滑らかな声音と華やかな面差しに加えて、アイディアも豊富なアーティスト。ひときわ朗らかなピアニスト河原忠之と共に舞台を支え、盛り上げるに違いない。ちなみに、彼女がコンサート前半で歌うアリアは、ドヴォルザークの《ルサルカ》のしっとりとした〈月に寄せる歌〉。子守歌のような親しみやすさを持つこの名曲も、どうぞお楽しみに!
文:岸 純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ2026年9月号より)
2026北九州国際音楽祭
華麗なる名曲とオペラ《椿姫》ハイライト
2026.10/10(土)15:00 北九州市立響ホール
問 北九州市芸術文化振興財団 音楽事業課093-663-6661
https://www.kimfes.com

岸 純信 Suminobu Kishi
オペラ研究家。『ぶらあぼ』ほか音楽雑誌&公演プログラムに寄稿、CD&DVD解説多数。NHK Eテレ『らららクラシック』、NHK-FM『オペラファンタスティカ』に出演多し。著書『オペラは手ごわい』(春秋社)、『オペラのひみつ』(メイツ出版)、訳書『ワーグナーとロッシーニ』『作曲家ビュッセル回想録』『歌の女神と学者たち 上巻』(八千代出版)など。大阪大学非常勤講師(オペラ史)。新国立劇場オペラ専門委員など歴任。
