バレエ団の代表作と未来へつながる新作を
2016年、創立60周年を迎える牧阿佐美バレヱ団は、今春から60周年記念公演シリーズを上演中だ。10月に上演するのは、ロマンティック・バレエの代表作で三谷恭三芸術監督の演出・改訂振付による『ジゼル』と、ドミニク・ウォルシュ振付『牧神の午後』日本初演。
『ジゼル』においてアルブレヒト役を踊ってきた三谷が目を向けたのは、粗野な敵役として描かれることの多いヒラリオンの人間的な側面だ。親しい友人もいて、信頼もされているヒラリオンなのに、届かないジゼルへの想いにより自らを追い詰め、別の顔をのぞかせていく。09年の上演ではヒラリオンを魅力的に踊った菊地研の演じるアルブレヒトと、進境著しいラグワスレン・オトゴンニャム演じるヒラリオン、この2人がジゼルをめぐり対峙し、火花を散らす。
ジゼル役は、表現力に進化をみせる青山季可。前回の上演では、壊れやすい心、アルブレヒトを守り抜く凛とした意思を見せた青山は、今回どのようなジゼルを描き出すのだろう。ミルタには、恵まれたプロポーションの久保茉莉恵が配されている。
新作『牧神の午後』は自身のコンテンポラリー・ダンス・カンパニーで次々と作品を発表しているウォルシュによる。節目の記念公演シリーズにおいて、未来へつながる新作を上演するところに、創作バレエにも注力し、ローラン・プティ、ナチョ・ドゥアトらの作品をいち早くレパートリーとしてきたバレエ団の心意気がよく現れているのではないだろうか。
文:守山実花
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年10月号から)
10/15(木)19:00 文京シビックホール
問:牧阿佐美バレヱ団公演事務局0570-03-2222
http://www.ambt.jp