いざ、フレンチ・ピアニズムの薫り豊かな世界へ――アレクサンドル・タローが大阪・箕面市立メイプルホールに登場!

 箕面市は、大阪中心部から阪急電鉄で約30分というアクセスの良さに加え、瀧安寺や箕面大滝など自然豊かな観光地としても知られる。

 箕面駅から徒歩7分の箕面市立メイプルホールには、近年、全国からクラシック音楽ファンが集う。メイプルホールの名が広く知られるようになったのは、このホールを拠点に2016年から始まった「身近なホールのクラシック」だ。地元市民との緊密なつながりを礎に、クラシック音楽にとどまらず芸術文化の裾野の拡大に貢献している。

箕面市立メイプルホール ©樋川智昭

 コンサートを聴くだけではなく、生涯学習講座など多くの学びの場もあり、それぞれが密接に結びついている点は、このシリーズの大きな特徴。充実のキャスティングやプログラミングによる公演を、多彩な講座やトーク・イベント、ゲネプロの見学会などを通してより深く楽しむことができる。

 「身近なホールのクラシック」シリーズ10年目となる2026年度のテーマは、「私たちには、言葉がある」。プロデューサーの和田大資氏は、“言葉”について「つながりや広がりが生まれ、感動を共有する際には言葉が大切な役割を果たしてくれている」と語る。

 9月30日に開催される「アレクサンドル・タロー ピアノ・リサイタル」は、そのラインナップを彩る公演だ。

 かつて、ピアノは私的な空間で演奏されていた。古典派の時代には、人々はデリケートな弱音の楽器の響きに耳を傾け、微妙な音と表現の変化を愛好した。その後、時代とともに楽器は改良され、迫力に満ちたサウンドを表現できるようになる。そんな現代にあっても、最弱音はピアノを聴く醍醐味のひとつ。501席のメイプルホールは、最良の形でそれを実現してくれるホールであり、タローの演奏を堪能するにはうってつけである。

アレクサンドル・タロー ©Marco Borggreve

 タローは、1989年のミュンヘン国際音楽コンクール第2位を受賞した実力派。早い時期からフランスの古典作品に意欲的に取り組んできた。彼の演奏には、“言葉”を語りかけるような自然な表現が息づいている。メロディを尊重し、洗練されたタッチから生み出されるその音楽は、精緻を極めた美しさを湛え、フランス音楽の精華を余すことなく伝えてくれる。

 そんなタローの今回のプログラムは、バロックから近代までのフランス音楽への敬意に満ち溢れている。十八番であるクープランをはじめ、シャブリエやプーランクなど、彼の得意な作曲家の作品が並ぶ。フォーレの学生時代の創作「ラシーヌ雅歌」は、クープランとほぼ同時代の詩人ジャン・ラシーヌを題材としている。グノーやビゼーをはじめ、その後のラヴェルやドビュッシーらも、古典主義の理想を創作の土台としていた作曲家だ。

 また、タローはアダンやメサジェのバレエ音楽もチョイスしているが、バレエもフランスで花開いたジャンル。そして、繊細かつ豊かな音の彩りもフランス音楽の特徴だ。例えば、絵画好きで知られたドビュッシーは、多彩な音のパレットを通して自身の海へのイメージを交響詩「海」に託した。この交響詩を、タローはピアノのために自ら編曲。彼のフランス愛がみっちり詰まったプログラムだ。

 タローがメイプルホールに登場するのは、3年ぶりとなる。このリサイタルで、彼は、フランス音楽の真髄を私たちに示してくれるだろう。

文:道下京子


「身近なホールのクラシック」

アレクサンドル・タロー ピアノ・リサイタル
2026.9/30(水)19:00 箕面市立メイプルホール

出演
アレクサンドル・タロー(ピアノ)

プログラム
クープラン:神秘の防壁
アダン(アンリ・ビュッセル編):バレエ『ジゼル』より「パ・ド・ドゥ」
グノー:即興曲
ビゼー:夜想曲 ニ長調
マスネ:メロディー op.10-5
メサジェ:バレエ『イゾリーヌ』より「マズルカ」
フォーレ(アレクサンドル・タロー編):ラシーヌ雅歌 op.11
プーランク:ノクターン第1番
シャブリエ:カプリス
シャブリエ:10の絵画風小品より「憂鬱」「村の踊り」「牧歌」「スケルツォ-ワルツ」
ラヴェル:ソナチネ
ドビュッシー(アレクサンドル・タロー編):交響詩「海」

問:箕面市メイプル文化財団072-721-2123
https://minoh-bunka.com

助成:一般財団法人地域創造