
チョン・ミョンフンによる演奏会形式のオペラといえば、東京フィルの目玉企画だ。今回は、2020年に公演したビゼーの《カルメン》を再び取り上げる。なじみ深い旋律が生命力たっぷりに連なっていく彼らの《カルメン》をまた耳にすることができるというわけだ。
スカラ座の音楽監督就任を控えたマエストロ・チョン。今年6月には、ミラノで《カルメン》のワールド・プレミエを指揮する予定だ。今回の東京フィル定期にも、そのとき出演する4名の歌手を招き、豪勢な舞台を作り上げる。
カルメン役は、フランスの至宝ステファニー・ドゥストラック。新国立劇場でも同役を歌い、その甘美さと冷徹さを兼ね備えた歌声で魅了した。ドン・ホセ役はマシュー・ポレンザーニ。メトロポリタン歌劇場で名を上げてヨーロッパ各地で活躍する、洗練された声で繊細な表情を歌い上げるテナーだ。狂おしい愛ゆえに破滅の坂を転がり落ちる男の心情を細やかに歌い上げてくれるだろう。そして、エスカミーリョ役のニコラ・クルジャルは堂々たる低音を響かせ、ミカエラ役のスラーフカ・ザーメチニーコヴァーが清らかな美声を聴かせてくれるはずだ。
6年前の演奏では、歌手はアンサンブルを重視した演奏を聴かせていた。今回は、それぞれのキャラクターを際立たせ、ドラマティックな愛憎劇が実現するに違いない。マエストロ自身は東京フィルとの再演にあたって、「より一層輝かしく、エンターテインメント性豊かな公演になる」と述べている。南風野香スペイン舞踊団によるフラメンコも登場するなど、演奏会形式を超えた濃密な舞台が期待できそうだ。
なお、29日の東京オペラシティ コンサートホール公演は、今シーズンの東京オペラシティ定期シリーズの開幕公演となる。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2026年6月号より)
チョン・ミョンフン(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
第1034回 サントリー定期シリーズ
2026.7/23(木)19:00 サントリーホール(完売)
第1035回 オーチャード定期演奏会
2026.7/26(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール(完売)
第175回 東京オペラシティ定期シリーズ
2026.7/29(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール(完売)
問:東京フィルチケットサービス 03-5353-9522
https://www.tpo.or.jp

鈴木淳史 Atsufumi Suzuki
雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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