
右:服部百音 ©YUJI HORI
日本フィルの6月の東京定期には、安定したタクトで楽団の潜在能力を巧みに引き出すマエストロ、フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)の広上淳一が登場、アメリカの情熱とオリエンタリズムが交錯する密度の高いプログラムを披露する。
注目は人気・実力ともに若手筆頭のヴァイオリニスト、服部百音が挑むファジル・サイのヴァイオリン協奏曲「ハーレムの千一夜」(2007)。 この作品はサイの母国トルコの民謡や伝統的打楽器を用いて、シェエラザードの物語をエキゾティックかつ現代的なリズムで描いている。 服部はこれまでもたびたび本作を取り上げており、すでに楽曲を十全に掌握している。 驚異的なテクニックと妖艶な表現力で物語にどこまで憑依してくれるか、更なる深まりが聴かれるに違いない。
このコンチェルトを挟むのは、アメリカをテーマにした二作。 ガーシュウィンの「パリのアメリカ人」は、1920年代の活気あふれるパリの街角をジャズの語法と洗練されたオーケストレーションで活写する。 タクシーのクラクションを模した音が響けば、そこは瞬時にしてシャンゼリゼ通りへと変貌する。 広上の軽妙なタクトが、都会的な華やかさを瑞々しく描き出すだろう。
メインを飾るのはコープランドの交響曲第3番。第二次世界大戦終結直後に完成したこの曲は、独立した楽曲としても名高い「市民のためのファンファーレ」がフィナーレで壮大に鳴り響き、アメリカ的なるもの、平和への祈り、勝利への希望などを感じさせる。 混迷の時代だからこそ、作品のメッセージを改めて噛み締めたい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2026年6月号より)
広上淳一(指揮)日本フィルハーモニー交響楽団 第781回 東京定期演奏会
2026.6/6(土)、6/7(日) 各日14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター 03-5378-5911
https://japanphil.or.jp

