異才アルトシュテットが仕掛ける濃密な二夜
——アホネンとの白熱のデュオと一夜限りの“フェスティバル”

左上より:ニコラ・アルトシュテット ©Marco Borggreve/ヨーナス・アホネン ©Julia Wesely/イリア・グリンゴルツ ©Kaupo Kikkas/アンナ=レナ・エルベルト/毛利文香 ©Sihoo Kim/原 麻理子 ©Fabian Karner

 アルトシュテットほど、引き出しの多いチェリストはいないだろう。幅広いレパートリーを巧みな技術と表現で弾きこなす。協奏曲や室内楽では、周りを生かしつつ自身の音楽性も強く印象付ける。さらに、作品や共演者の違いに応じて、まったく異なる姿を見せてくれる。コパチンスカヤ、ファジル・サイ、エメリャニチェフにエベーヌ弦楽四重奏団と、とりわけ鬼才・異才系アーティストとの共演が多いのも彼の音楽家としての立ち位置を示してくれよう。

 そんなチェリストの引き出しをすべて開けさせようといわんばかりに、TOPPANホールは2夜にわたる演奏会を企画した。

 第1夜は、ヨーナス・アホネンとのデュオで、ベートーヴェンやブリテン、バーバーのチェロ・ソナタなどを取り上げる。それぞれの時代の「古典」と呼ばれるべき作品に、このチェリストがどのようにアプローチするのか、その音楽性をじっくりと味わえる一夜だ。

 第2夜は、2回の休憩を挟んで3時間半にわたるマラソン・コンサートだ。5名の共演者を迎え、ドヴォルザークからギデオン・クラインまで、民族音楽にルーツをもつ6作品を演奏する。アルトシュテットとアホネンに、イリア・グリンゴルツが加わったドヴォルザークの「ドゥムキー」三重奏曲、その3人とソプラノ歌手アンナ=レナ・エルベルトによるショスタコーヴィチの「ブロークの詩による7つのロマンス」など多彩。そして、毛利文香と原麻理子も加わったバルトークのピアノ五重奏曲で壮大に締めくくる。まさしく鬼才チェリストの「全部乗せ」演奏会といえよう。

文:鈴木淳史

(ぶらあぼ2026年5月号より)

ニコラ・アルトシュテット(チェロ) プロジェクト
【第1夜—Duo】2026.5/26(火)19:00 
【第2夜—マラソンコンサート】5/29(金)18:30
TOPPANホール
問:TOPPANホールチケットセンター03-5840-2222 
https://www.toppanhall.com


鈴木淳史 Atsufumi Suzuki

雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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