
右:ニコラ・バルディルー
30代半ばとは、これまで積み重ねてきたものが土台に乗り始めたり、大きな転機を迎えたりする年齢だという。4月の休日に行われる、名誉客演指揮者の尾高忠明を迎えての読響公演では、2人の作曲家がこの年齢で書いた曲を並べてみせる。
クラリネット協奏曲は、モーツァルトが35歳のときの作品。早すぎる死の数ヵ月前に作曲され、彼にとっての最後の協奏曲としても知られていよう。その澄み切った響きに、どこか枯淡の境地もうかがえる音楽だ。
ソリストとして登場するのは、フランス放送フィルの首席奏者であり、ピリオド演奏にも造詣が深いクラリネット奏者、ニコラ・バルディルー。本来はバセット・クラリネットのために書かれたこの協奏曲を、深みのある音色を生かして奏でてくれるのではないか。
「英雄の生涯」は、リヒャルト・シュトラウスが34歳で書いた、彼にとって最後となった交響詩だ。この後、作曲家はオペラの仕事に専念することになるのだった(そして、モーツァルトと違って、彼はその年齢から半世紀近い人生を送ることになる)。
まさしく、これまでの「交響詩」作曲家としての人生を振り返るような大作で、過去の交響詩の引用も行われる。編成の大きな作品を効率よく響かせる尾高忠明の指揮、そして読響の充実したアンサンブルにより、巨大な作品のすみずみまで光があたる演奏になるはずだ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2026年3月号より)
尾高忠明(指揮) 読売日本交響楽団
第286回 土曜マチネーシリーズ
2026.4/4(土)
第286回 日曜マチネーシリーズ
2026.4/5(日)
各日14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
2/28(土)発売
問:読響チケットセンター0570-00-4390
https://yomikyo.or.jp

鈴木淳史 Atsufumi Suzuki
雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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