ショパンに師事し、15歳を目前に夭逝したピアニストのカール・フィルチュ。その作品集を2枚リリースし、フィルチュの故郷ルーマニア・セベシュ市より名誉市民の称号を授与された萩原千代が、研究対象を兄ヨゼフへと広げた一枚。17歳年下の弟をケアしながら共に音楽活動を行うようになったヨゼフは、「ハンガリーの調べ」「マズルカ」など、サロン的な華やかさと素朴さを併せ持つ小品を残した。録音はフィルチュ兄弟の生地セベシュの福音教会で行われ、YAMAHA C6Xの温かな響きが忘れられた兄の音楽を穏やかに照らし出す。兄弟の活動を知るための貴重な録音である。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2026年3月号より)
【information】
CD『ヨゼフ・フィルチュの世界/萩原千代』
ヨゼフ・フィルチュ:諦念—悲歌—、ハンガリーの調べ、子守唄、音のまどろみ、マズルカ、2つのサロン用練習曲、言葉のないロマンス、村の鐘
萩原千代(ピアノ)
コジマ録音
ALM-9287 ¥3300(税込)

飯田有抄 Arisa Iida(クラシック音楽ファシリテーター)
音楽専門誌、書籍、楽譜、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジン等に執筆、市民講座講師、音楽イベントの司会等に従事する。著書に「ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんなにも愛されるのか」「クラシック音楽への招待 子どものための50のとびら」(音楽之友社)等がある。公益財団法人福田靖子賞基金理事。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。



